『戯作者銘々伝』
5月24日~6月14日=紀伊国屋サザンシアター『戯作者銘々伝』撮影:熊切大輔
幕府の弾圧で一度は筆を折った戯作者・山東京伝が、純真な花火師に出会い、再び“笑い”に命をかける…。実在の戯作者をモチーフに、志を貫く人々の姿を描いた井上ひさしさんの『戯作者銘々伝』等の小説を素材として、東憲司さんが書きあげたのが今回の新作戯曲です。
山東京伝役には北村有起哉さん。ほか新妻聖子さん(『ファースト・デート』)、山路和弘さん(『三文オペラ』)ら、ミュージカル界でも活躍中の方々が起用され、音楽は宮川彬良さんが担当。新妻さんはオリジナル曲も歌う予定とのことで、これまで洋楽を歌い上げることの多かった新妻さんが歌う「和」フレーバーの音楽にも、期待が集まります。
【取材会レポート】
『戯作者銘々伝』出演者の皆さんと作・演出の東憲司さん(前列左)、プロデューサーの井上麻矢さん(前列右)(C)Marino Matsushima
『戯作者銘々伝』稽古より。(C)Marino Matsushima
『戯作者銘々伝』撮影:谷古宇正彦
本作の音楽を担当した宮川彬良さんは、トークの面白さに定評のある作曲家。5月28日公演後のトークショーでも、滑らかな語りは絶好調。本作の核心を絡めたお話を展開されていましたので、今回は「観劇レポート」の代わりに当日のレポートをお送りします!
まずはこの日初めてご覧になったらしい、完成形の舞台への感想から。「終盤に井上ひさし原作の作品らしさを感じました。大きな花火を作ったというだけで(お上に)花火師が追い詰められたとき、彼を応援していた文学者の山東京伝は“(まあ、世の中って)こんなものかな”と彼と一線を引いてしまう。机の前の(建前だけの)人なんですよね。僕も(芸術家として)いつも大切なことを考えているつもりだけど、いかんせん机の前で仕事をしているので、本当に人を助けられているかと時々自問自答してしまう。そういう思いがあらわになってきて、お客様たちもそれに同調して大きなうねりが出来ていた。その一部になれて、今日は光栄な気持ちでした」と宮川さんは語ります。
『戯作者銘々伝』撮影:谷古宇正彦
「僕は40代のころ10年間やっていた『クインテット』という音楽番組で、子供の歌ばかりでなく、世の中を鋭利な気持ちで切るような風刺の歌も作っていたこともあって、井上ひさしさんと同じ、熱いマグマを持っていると思うんです。だから『MUSASHI』の時もそうだったけれど、(作曲のために)井上戯曲を読むと音楽がどんどん湧いてきちゃうんです。今回は“式亭三馬”にひっかけてサンバだとかね。“これでええのか江戸時代~”って、歌う新妻聖子さんがまた何とも色っぽいんですよね。ああいうふうに歌われちゃったらもう…と思いますね(笑)」と、創作過程はノリに乗っていたご様子です。
『戯作者銘々伝』撮影:谷古宇正彦
*次頁で『DOWNTOWN FOLLIES Vol.10』以降の作品をご紹介します!