その1 そもそもなぜコミュニケーションが大事なのか
社内報制作は、編集技術より大切なものがある
自らが働く場面をイメージすれば、コミュニケーションが活性化した方が良いに決まっていると、そのように考えるのは当然です。それをロジカルに考えるとどうなるのか。実は、私たちが所属する組織では、このコミュニケーションが根源的に無くてはならないものなのです。
アメリカ合衆国の電話会社社長で経営学者でもあったチェスター・バーナードが組織について定義しています。曰く、「組織とは、意識的に調整された2人または、それ以上の人々の活動や諸力のシステム」ということです。そして、この組織が成立するためには、次の3つの要件があるとしています。
・共通目的(組織目的)
・協働意志(貢献意欲)
・コミュニケーション
つまり、メンバーが同じ目標に向かって、コミュニケーションを取りながら協力していることが組織というわけです。
さらに、組織が目標とする共通目的は、トップと現場とのコミユニケーションを通じて伝達されますし、貢献意欲も、同じ組織で働くメンバーのことをより深く理解することで、その意欲も高まります。組織の成立要件のうち、組織目的と貢献意欲はコミュニケーションがベースとなり成立するのです。
なにげなく使っているコミュニケーションという言葉は、組織が組織であるために、その組織目的を達成するためには、無くてはならない大事な要素なのです。
その2 コミュニケーションの4つの原則
その大事な要素であるコミュニケーションについて、かのドラッカーが4つの原則を記しています。「コミュニケーションとは要求である、期待である、知覚である。そしてコミュニケーションとは情報ではない」。この4つの原則について社内報を例に取って解説してみましょう。「コミュニケーションは要求である」
コミュニケーションを取ろうとする者、メッセージを発信する者は、ある要求があるからコミュニケーションをするのである、ということです。
社内報で展開される各企画について、当然ながら社内報編集担当者としての企画主旨があるはずです。知って欲しい、理解して欲しい、共感して行動して欲しい、そのような思いがあって企画立案されていくはずです。そのような思いが強ければ強いほどメッセージ性が高まります。逆に、何かを伝えたいという思いを持てない企画は読者に読まれないでしょうし、たとえ読まれても何も残らないでしょう。まずは、伝えたい何かがある企画なのか、伝えたいという思いがあるのか、自問自答することが大切です。
「コミュニケーションは期待である」
コミュニケーションの受け手は自分の関心事には耳を傾けますが、それから外れるものは聞いているようで聞いていない、ということです。
社内報で読者ターゲットを定めたのであれば、そのターゲットの興味、関心事を把握して、伝えたいメッセージをそれにリンクするような加工を施すことが必要です。いわゆる企画の切り口を考えることが該当します。そのためには、机の上だけで仕事をするのではなく、積極的に現場に出向き、社員がいま何を考えながら仕事をしているのか、どのような課題や不安を抱えているのかを掴むことが必要です。現場の空気感を把握しに行くのです。
「コミュニケーションは知覚である」
コミュニケーションを取ろうとする者とその受け手の間には、大きな違いがあることを認識しなさい、ということです。
社内報担当者は広報部門に所属していることが多いでしょう。広報部門は経営の中枢です。日々高度な情報をシャワーのように浴びているはずです。一方、社内報の読者は、日々目の前の仕事に追われ、目の前の仕事を処理するだけの社員も多いことでしょう。社内報担当者と現場社員の間には、接する情報の量も質も、そして関心事や問題意識に大きな違いがあるのです。この違いを認識せずに、広報部目線で作成された社内報が、現場社員に理解されるでしょうか。大事なことは、どこまで現場目線に立てるかということ。そのためにも、先に記したように現場に出向き、目線を合わせる努力が大事となります。
「コミュニケーションは情報ではない」
数値や客観的な記述では、コミュニケーションの最終目的である行動には結び付かない。共感や感動を与えられるようなストーリーで持ってコミュニケーションはなされるべきである、ということです。
ストーリーテリングが社内報にも必要です。自分事として捉えてもらわなければ、行動には結び付きません。その当事者意識を喚起させるためには、感情移入ができるような、起承転結のあるストーリーとして伝える必要があります。課題があり、どのように苦しみ、それをとのように克服し、どのような効果があったのか。その当事者に、感情の流れも含めて語ってもらう。読者が疑似体験できるようなストーリーとして掲載することで、共感を得てもらい、自らに置き換え、その効果を自らとしてイメージして、初めて行動に結び付く可能性があるわけです。数値や箇条書きでポイントを示されたとしても、そこにはなんら共感を得ることはないでしょう。どこまでエモーショナルな表現ができるかが勝負となるのです。