(c)David Ruano
セビージャ生まれ。現代フラメンコ界を代表する
踊り手が、あえて「カルメン」に挑む
「カルメン」という題材はオペラ、バレエ、演劇、ミュージカル、ダンス、フィギュアスケートなどなど、あらゆるジャンルで引っ張りだこです。「カルメン」と聞いただけで、赤黒の伝統的なドレスを着た女性像が思い浮かぶし、ビゼーの音楽が高らかに頭の中で鳴り響く。何を隠そう、私もカルメンファン!小学生の頃、テレビの劇場中継で日本のオペラカンパニーによる小沢征爾さん指揮の『カルメン』をやっていて、全編をテープに録音。テープが伸びるくらい繰り返し聞き、歌っていた子供でした(日本語上演でした!)。今でも口ずさめるくらい、ビゼーの音楽には虜になったものです。最近ではフランク・ワイルドホーン作曲のミュージカル『カルメン』が印象深いですね。どんなリアルなカルメン像を作り出すか、カルメン役の濱田めぐみさんや演出家の小林香さんが、稽古場で試行錯誤なさるのを見て、「今までイメージされてきたカルメンって実在には遠い女性だなぁ」としみじみ思ったものです。美人で色っぽくて、誰でもすぐ誘惑できちゃう。ある意味、自分にないものばかりで羨ましいとしかいいようがないのですが(汗)、まあそういう女性もいますよね、きっと。
そして今ちょうどイギリスではマシュー・ボーンの『THE CAR MAN』が上演中。私がマシューファンになったきっかけの作品です。ビゼーの音楽だけど、舞台は自動車の町工場。こちらも登場する女性たちは色っぽく、俗っぽく。
一方、フラメンコ舞踊家マリア・パへスの新作『Yo, Carmen-私が、カルメン-』は、今までと全く異なるカルメン像だとか。
マリア・パヘスさんといえば、アイリッシュミュージカル『リバーダンス』中の「FIREDANCE」の踊り手として有名ですね。あの熱量と地に足のついた存在感は忘れられません。スペイン舞踊ならではの豊かな生命力ゆえでしょうか。ご自身の舞踊団を持ち、伝統的なフラメンコと革新性を融合させたオリジナル作品を精力的に生み出すマリアさん。そんな彼女にとって、カルメンとはどんな存在なのでしょう? 素朴な疑問を抱きつつ、インタビューさせていただきました。
(c)David Ruano