人間ドックを毎年受けるのは消費なのか
投資と消費の違いを考えてみた
しかしここでは、「人間ドックを毎年受けるのは消費」として解説します。その判断基準は、「健康寿命を延ばす」視点です。
まず、人間ドックの受診と長寿について調べても、因果関係があるかどうかはっきりしません。それを、世界の他の国と比較して検証してみます。(出所:OECD)
たとえば2012年の平均寿命の長さは、総合トップは日本の84歳。次にアンドラ、オーストラリア、イタリア、サンマリノ、シンガポール、スイスが同順位で83歳。
しかし男性だけ見ると、トップはサンマリノ、2位がオーストラリア、アイスランド、スイスで、日本はその次の5位。つまり男性はオーストラリアのほうが長寿です。
(ちなみに女性はトップの日本、アンドラ、モナコと来て、4位はオーストラリアやフランス、スイス、韓国、シンガポールなど8カ国が連なっています。
しかしオーストラリアを始め他の国には、人間ドックや健康診断という、定期健康検査の制度がなく、自らの判断で病院に行くようになっています。
人間ドックはどうも日本独自のシステムのようで、海外では富裕層向けのサービスという位置づけです。
平均寿命が日本と同等レベルにあるスイスでも、乳がんの過剰検診は意味がないものとして、医療当局が注意をよびかけたニュースが話題になりました。
人間ドックは健康寿命を延ばすための予防医学の一環という意見もあるのですが、日本より要介護率の低いフランス(80歳以上の在宅高齢者の要介護率 日本28% フランス11.1%)でも、人間ドックは特に制度化されていません。
上記は在宅で、日本では老人ホームが充実しているからではないかと思いましたが、施設入所者の割合は、同フランス31.7%日本20%とフランスのほうが高い。
フランスは要介護者を施設に押し込めて在宅のほうが少数派なのかもしれないなど、いろいろ勘ぐることは可能ですが、受診と長寿、及び健康長寿を結びつける(単なる相関関係ではなく、因果関係があるという)データが見当たりません。
つまり、人間ドックがムダというデータはないのですが、有効だというデータもない。ということは「どっちでもいい」。だから消費というわけです。
それに、もしかすると早期発見が仇となり、本来は放っておいても問題ない症状まで再検査したり、クスリを処方されたり、あるいは手術をすることにならないとも限りません。
ほとんどの人にとっての人間ドックは、「とりあえず問題がなくてホッとした」という安心材料か、「数値が悪いから気をつけよう」と、自分の生活習慣を見直す材料に過ぎないのではないでしょうか。
それはそれで意味のあることかもしれませんが、投下した金額に見合う価値があるかどうか?
参考図書:『お金持ちが財布を開く前に必ずすること』(午堂登紀雄 著/KADOKAWAメディアファクトリー)