照明・LED

店をお手本に!照度より重要な照明による演出効果

優れた店舗照明は家の照明のお手本になります。例えば料理をおいしそうに見せたり、雰囲気が気分を高揚させるレストランはダイニングルームの照明を考えるための大きなヒントになるでしょう。店舗照明の歴史をたどると、つい最近まで照度という明るさの競争がありました。しかし今日では商品を単に明るく目立たせる見せ方から、いかに効果的に魅せるかの演出にウエイトが置かれるようになっているのです。

中島 龍興

執筆者:中島 龍興

照明ガイド

店の由来と照明

いろいろと調べてみると「店」の語源は鎌倉時代に遡るようです。それまで野菜や魚などの売り物は地面に置いて見せていました。

しかし、このような生鮮食材を地面に置くことは衛生上の問題があり、また見えにくいことから見世棚と言われる台が設けられ、そこに売り物を置いて商売するようになったようです。

その様子は戦国時代に書かれた洛外洛中図という、当時京都の町中における、人々の生活や風俗を描いた屏風図に見ることができます。その見世棚の「見世」から「店」と言われるようになったのが有力な説のようです。

今日でも各地で開かれている朝市などにその原型を見ることができます。(写真1)
朝市undefinedオープンマーケット

写真1. 店の原型である市。台に商品が載せられている。

さて、ものを見せるには光が不可欠です。今日のような電灯照明のなかった時代、光は自然光主体になります。しかし、日中、室内でものの販売を行うところでは、天候や時間帯によっては光が不足になりがちです。

江戸時代の浮世絵のなかにお店の室内を描いた絵があります。例えば呉服店では明かり障子を透過した自然採光で室内を明るくしている様子が描かれています。

しかし不安定な自然採光を考慮してか、別に雪洞や行燈など油や蝋燭の光が用意されてあり、時には人工光主体で商品の見定めを行なっていた、と想定されます。

江戸時代の夜は真っ暗で、治安上の問題を含め、今で言う夜10時ごろ(夜4つ、亥の刻)になる鐘を合図に町ごとに作られた木戸が閉じられ、いわゆる外出禁止になります。

よほどの理由がない限り外出することはないのですが、いつの時代もルール破りの人はいたようです。しかし夜の早いうちは誰もが提灯を持って出歩くことができ、芝居小屋などのある街では蕎麦屋などの屋台があったりして賑わっていました。

満月(0.2ルクス)及びそれに近い月夜であれば、当時の人にとって提灯が不要なくらい、通りは明るいと感じていたようです。

夜に店の営業が積極的になったのはガス灯が灯る時代からと言えます。
日本で初のガス灯は明治5年に横浜の馬車道通りに点いた時まで遡ります。

そして間もなく電灯照明の時代に入ると小さな通りまでほの明るくなります。

戦後間もなくして経済が上向きはじめ電力事情も改善されると、照明が発達するようになります。商店街の店主は隣接する店舗より明るくすることで、店は豪華に見え、人が集まり売り上げ向上に関係することを信じるようになります。

このころから店舗は明るさの競争が始まるのです。

明るくすることは電気料金というコストがかかり贅沢と考えられていた時代でもありました。そういえば照度の単位であるルクス(Lux→lx)は、一説によると英語のLuxury(ラグジュアリー)に語源があると言われており、明るいことは贅沢という意味につながります。

次のページでは「明るく見せる店から効果的に見せる店へ」についてご紹介します。

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