今回は続編として、バリアフリーキッチンやキッチンワゴン、ビルトイン機器など、機能面で気になったアイテムを中心にご紹介します。
ドイツのバリアフリーキッチンはこんなにおしゃれ
カジュアルなデザインのキッチンには、どこか心引かれます。若手デザイナーが試作モデルを発表するゾーンで見つけたキッチンをご紹介します。話を聞いてみると、これはドイツ・ベルリン在住のデザイナー、ディルク・ヴィオットさんの試作モデルで、自分のおばあさまとの暮らしから着想したバリアフリーキッチンなのだそうです。
車いすに乗ったままでも作業がしやすいように、キッチンの下は全部オープン。水栓はホース式で引き出して、手元まで寄せられます。このキッチンを開発するにあたってディルクさんは目隠しをしたり、腕に重しをつけて料理を試み、体の不自由な人の気持ちになってデザインを進めたそうです。
面白いのは万力で挟むボトルオープナー。力のない人でも瓶を開け閉めしやすいように、とのこと。万力に瓶をはさむのが大変そう?と思ってしまいますが、ディルクさん曰く「高齢者や体の不自由な人だけではなく、キッチンは誰もが集まれる場所になってほしい」と思いを込めたそうです。
機内食ワゴンもキッチン空間の一部に
「ボードバー」はドイツではおなじみの小物家具ブランド。機内食を運ぶワゴンを改良して、家庭で使えるようにしたというロングセラー商品です。さまざまなデザインやバリエーションがありますが、今年はとくに食にフォーカスしたものがユニークでした。ボードバーワゴンの天板が「ミートチョップブロック」になっています。お肉を塊で売っているヨーロッパでは、キッチンに大きな肉をチョップする(切る)まな板を備えている家庭が多いようです。そのためのスペースをかねたミートチョップワゴン。お肉を買った日はワゴンを引き出して、という使い方なのでしょうか。
次の写真はダイニングをカフェスペースに変えてくれるバージョン。最近は日本でもホームパーティでカプセル式のコーヒーをすすめられることがありますが、こんな風にカプセルがワゴンから出てきたら、楽しくなってしまいますね。テーブルのそばでコーヒーが入れられるので、おしゃべりの時間が遮られることもありません。
調理家電はホームコントロール機能を強化
今は何でもデジタルでコントロールする時代ですが、キッチンまわりの家電も例外ではないようです。オーブンの予熱時間や焼き時間を設定したり、換気扇を離れたところで止めたり(食事中に止めに行くの、面倒くさいですよね)、ドラム式洗濯機や食器洗い機の終了時間を設定したり、モバイル機器を使って家事に関わる家電をコントロールできるシステムは、海外のキッチン家電ブランド各社が力を入れていました。
ボッシュ「ホームコネクト」システムはWi-Fiで食器洗い機やオーブンを制御。多忙な家族でも「オーブンで料理を焼き過ぎてないかしら?」「食器洗い機のスイッチ入れたっけ」ということがないそう。2階の寝室で思い出した時、ガーデニング中にオーブンが気になるなど、そんなときに活躍しそうです。
これは海外の大きな家ならではの悩みかもしれないですが、日本も夫婦が働く時代、キッチンの機能をWi-Fiで制御する時代は間もなくかも知れません。
一方でレトロデザインにも注目が?
そんなハイテク化が進むヨーロッパのキッチンですが、実はアメリカではまだまだ大型のガスレンジが主流なのだそうです。そんな市場に向けて、ドイツのミーレからはこんな大きなガスレンジが登場。スマートなイメージが強いブランドだけに意外です。ヨーロッパ向けにはパネルタッチ操作の機器を出していましたが、アメリカ向けには大きなダイヤルのガスレンジを提案。「ビッグ・イズ・ビューティフル」がキーワードだそう。ターキーやピザ、大きなものがたくさん焼けそうですね。
東欧の家電ブランド・ゴレニアからは、さらにレトロなモデルも。黒の本体にアンティークブラス色でダイヤル表示やドアのデザイン。
こんな風にクラシックやラスティック調のキッチンに似合いそうです。日本にもこんなコンロが登場するといいですね。
取材・文=本間美紀
取材協力=ケルンメッセ日本支社