たった2週間で1000億円超え
良い投信はゆっくりと売れていく
日本経済新聞では、「当初設定額が1000億円を上回ったファンドは2年ぶりで、16日時点の資産額は2176億円の上る」と報じています。野村といえば、販売力では日本随一の証券グループです。その昔、2000年にはノムラ日本戦略株ファンドが発売され、設定前に7900億円余りを集めたという記録があります。
良い投信はゆっくりと売れていく
それにしても、どうして新しい投資信託が、こんな勢いで売れてしまうのでしょう?というのは、投資信託の品質はその運用力にあり、運用の実績を見なければ、投資信託の評価はできません。だから、新発売されても一気に買われるのではなく、その成績が評価されて、徐々に売れていくというのが、自然な流れであるからです。
最初から爆売れすることが良いこととは限りません。事実、2000年に空前の売れ行きを記録したノムラ日本戦略株ファンドは、基準価額1万円で売り出されるも、日本株の凋落とともに6割も下落(4000円割れ)して、現在でも当初の1万円を回復していません。日本では初の1兆円ファンドとして打ち上げられたプロジェクトは、現在は日本の投信の悲劇として記憶に残っています。多くの投資家の恨み節が今でも聞かれます。
こんな悲劇を繰り返さないためにも、私たち投資家はもう少し賢くならなければいけません。
なぜ新しい投信を買ってしまうのか?
品質を確認できる運用記録がないのにどうして買うのかといぶかる私がいる一方で、記録がないから買えるのだという声もあります。この20年あまり、日本株は低迷を続けていましたから、運用記録を見れば、どんな好ファンドでも買う気が失せてしまうというのです。痛い記録がない代わりに、淡い期待だけあるということでしょうか?爆発的に売れた、この日本企業価値向上ファンドに関して、記録がなくても分かる魅力はなんだろう?と、販売資料を読み返しているのですが、企業のROE(株主資本利益率)に注目して投資先を選別するということ以外に、特徴的なことが見つかりません。
他にあるとしたら、紙に書かれていない言葉、セールストークに魅力があるのかもしれません。
なぜ新しい投信を売ってしまうのか?
新しい投資信託を設定する場合に、運用会社は早くお金を集めるために販売キャンペーンを行います。もしかしたら、販売会社にはノルマが課され、ノルマ達成者には上乗せの報酬など出ているかもしれません。セールスする人にとっても、過去の運用成績を説明したり、言い訳したりするよりも、販売資料に基づいて期待だけ語る方が、やりやすいのは確かです。だから、余計に新しい投資信託のセールスに力が入るのかもしれません。
セールスの圧力に対応する私たち投資家は、クールに見極めて、より良い選択をせねばなりません。
新しいファンドばかり売れること以外に、分配型がよく売れる、保有期間が短い、長寿ファンドが少ないなど、日本の投信業界には海外では珍しいことがけっこうあります。そうした事実から、自分たちのあるべき姿勢を学ぶことができます。