グルメトピックス/グルメトピックス

生産者と消費者をつなぐ月刊誌『東北食べる通信』

独自の哲学をもつ東北の生産者をクローズアップし、特集記事とともに、彼らが収穫した農水産物をセットにして届ける『東北食べる通信』。同誌が仕掛ける、ある「取り組み」が全国展開するなど話題をよんでいる。関係者に取材を敢行。その思いを聞いた。

執筆者:All About 編集部

広がる『東北食べる通信』の取り組み

南三陸を取材する高橋氏

南三陸を取材する高橋氏

独自の哲学をもつ東北の生産者をクローズアップし、特集記事とともに、彼らが収穫した農水産物をセットにして届ける『東北食べる通信』。「便利で楽な世の中になればなるほど、作り手と受け手の距離はどんどん遠くなっていく。都市部と農村部をつなぎ、生産者と消費者の絆を取り戻すことこそが、歪んでしまった食のカタチを改善するきっかけになるのでは」という思いのもと、同誌編集長であり、岩手県出身の高橋博之さんによって2013年7月に創刊された。読者数は現在1500人、7割が首都圏在住で30~50代が中心だという。

2015年3月号で特集した秋田県八森漁港の槍烏賊

2015年3月号で特集した秋田県八森漁港の槍烏賊

『東北食べる通信』でこれまで取り上げられた食材は、槍烏賊、牡蠣、お米、帆立、鮭、里芋、牛肉など、東北の肥沃な大地と豊かな海で育った自慢の一品ばかり。宮城県南三陸町の生ワカメを特集した2014年3月号では、長さが2mにも達する生ワカメを手に取った読者から大きな反響があった。塩蔵加工前の生ワカメは市場に出回ることは少ないが、実は塩蔵ワカメにはない強い磯の香りが楽しめる。新鮮なワカメは、お湯にくぐらせてそのまま食べるだけでも十分美味しい。丁寧に取材した文章と美しい写真を通して、生産者の生い立ちやこだわり、熱い思いを知り、他人であるはずの生産者に興味や共感が沸いてくる。そしてその生産者が大切に育てた自慢の食材に触れ、料理して食べることで、生産者との距離がぐっと縮まるのだ。

定期的に読者と生産者との交流を行っている

定期的に読者と生産者との交流を行っている

「生産者はこれまで、自分が精魂込めて作った農水産物がどんな人によってどのように食べられているか知る機会がありませんでした。『東北食べる通信』では、SNSのコミュニティ上で、読者がその食材を使った料理の写真やレシピを投稿し、生産者とコミュニケーションを取っています。これをきっかけに、生産者たちはただ出荷していただけの農水産物をインターネット上で情報発信したり、販売を始めたりしながら、自分たちの価値を引き出し、表現するようになったんです」と、同誌を運営する NPO法人東北開墾事務局の阿部正幸さんは話す。

一方、都会の生活で暮らす消費者たちも命あるものに触れる機会を奪われ、元気を失っていた。SNS上で生産者とつながりをもった読者の中には、東北の生産現場に足を運んで見学したり、勉強会を開いたり、自発的に行動する人々が増えているという。

世界初の食べ物付き月刊誌『東北食べる通信』

世界初の食べ物付き月刊誌『東北食べる通信』

現在、『東北食べる通信』と同様の仕組みが日本全国に広がりつつあり、2014 年4月には統括組織として一般社団法人「日本食べる通信リーグ」が発足し、今年5月までに四国や神奈川、十勝、築地など12のエリアでの創刊が決定している。2017年度までに全国で100の『食べる通信』を発行することが目標だ。生産者と消費者とがつながり、互いの顔が見える豊かなコミュニティづくりは、元気な日本を取り戻す大きな一歩になるに違いない。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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