企業の人材採用/人材採用の考え方

売り手市場でも新入社員が辞めない採用活動のコツ

売り手市場となり、採用したい学生がやってこないと嘆く人事担当者が増えています。またせっかく採用しても、会社をすぐに辞められては採用活動が水の泡です。どうしたら採用活動がうまくいくのかのポイントを解説します。

小澤 明人

執筆者:小澤 明人

辞めない人材採用&幸せになる就活ガイド

売り手市場で人が採れない!追い詰められた人事担当者

「売り手市場!売り手市場!」とマスコミを中心に大騒ぎされ始めた採用マーケット。

苦しみ続けた求職者にとっては、暗黒の20数年もようやく開ける兆しが見えてきました。その反面、浮足立ってきたのは各社の採用担当者です。先日、首都圏で行われた中小中堅企業が主体の合同企業説明会(新卒・既卒向け)では、何とか求職者の気をひこうとバットマンスーツを身にまとった人事さんまで登場していました。悲しいかな、これが現実です。まるでエントリーシートにラインマーカーをひいて提出する学生さんと……同じで採用をする人事担当者側にも大きな勘違いが始まっていると言えます。

「売り手市場」の経験が無い採用担当者

20年ほど続いた不景気の中では、人の採用はそうそう難しい作業ではありませんでした。ある程度の費用を掛けて求人広告の掲載を増やしたり、時には人材紹介会社の力を借りて通り一遍の採用活動を行えば無名の中小企業であっても何とか「人」を採ることができました。しかし、その長い買い手市場によって肝心の採用スキルも雇用環境の整備も緻密さを欠いてしまったのが偽らざる現状でしょう。

そして「せっかく採ったのに早期離職」が繰り返され、求職者vs採用企業の矛先はついに国を挙げてのブラック企業対策という状況をも生んでしまいました。

従来型の採用システムやノウハウに「正解」を委ねない

今、中小企業の採用担当者にとって大切なこと、それは何より従来型の採用システムやノウハウに「正解」を委ねないことでしょう。その確立された手順は大手有名企業の採用ノウハウをそのまま形にしてしまったようなものなのです。例えばエントリー数(母集団)の確保と充実に力を注ぐこと、それがそのまま中小企業のより良い採用に直結するのではなく、たった一人の候補者であっても「育てて採る」という考え方ができるかどうかが大切なことなの?す。

「志望動機も語れない若者ばかりかッ!」
「うちのホームページさえ見てこない候補者なんてダメッ!」

そう感じるのもごもっともなことですが、求職者のせいにしていても状況は変わりません。何より、その採用の仕組みを作り上げてきたのも企業側の責任です。インターネットが導入され求人ナビが出始めのころ、当時の人事さんはこう嘆いていました。

「ナビから応募の候補者は、意識がふわふわしていていかん」
「やっぱり求人誌を買って読まない候補者は軽い!」

だから、出会った候補者には一所懸命に事の真意を示そうと熱く語りかけていました。それがいつしか”座ったままエントリーを待つ楽な採用””会う前に絞り込む上から目線の採用”へとシフトしていったのは言うまでもありません。

説明会の前日(前々日)には自動設定したメールで参加確認、説明会会場はエントリー数の30~50%を想定。そしてようやく絞り込んだ候補者に、最後の最後に逃げられてしまう現実が繰り返されているのではないでしょうか?

Webの普及でどんなに便利な世の中になったとしても、無名の中小企業はそのツールの上に「持っていなければならない心」があります。それは…「新聞の1行求人からも一人ひとりを大切に採用していった姿勢とマインド」ではないでしょうか?

大人の姿勢が若年層の働く気持ちを台無しに

現在のWeb採用の仕組みの中では、応募者にきちんとした志望動機を期待するのは難しいこと。手元に流れる情報をキャッチしても深掘りはできないのがスマホ世代の特徴なのです。そして彼らが見てきた時代、つまり私達大人が見せてきた時代が若年層の「働く気持ち(就労観)」を台無しにしてしまったのです。

経済成長と就労観

見てきた時代が若者の就労観を台無しに


ならば、最初から「志望動機は持ってこないもの」と考えて採用活動に臨むべきでしょう。絞り込むのではなく、育てて採ることの必要性はそこにあります。「求職者の動機構築は人事の手腕」と考えて選考の仕組みを再構築してください。

応募、説明会、選考面接などを通じて”来た人をジャッジする”のではなく、”来てくれた人にファンになって貰う”こと。ファンとは決して人気取りのことではなく、「この人たちに任せれば自分はきっと育つことができる」という安心感を持って貰うこと。選考プロセスの中で、頼りになる人・頼りになる会社・頼りになるビジネスモデルをどれだけ表現して伝えきることが出来るかが大切なことです。

例えば…

・当たり前に使っている「専門用語」は求職者に伝わっているのでしょうか?
・若年求職者は「上場、非上場の意味」さえ理解していないケースも多くあります
・マーケットに対して事業の規模感は適正なのか…求職者には分かりません


など、など……小さな疑問が積み重なって決心を鈍らせる求職者は少なくありません。その小さな疑問を受け止めてくれて丁寧に理解させてくれる採用担当者に、大きな安心感を抱いてくれることでしょう。厳しい仕事にも充分に耐えて働ける「志」はそのベースがあってこそ宿るものなのです。

企業人事は…
「働く動機」を気付かせてくれる水先案内人

企業人事は…
「働く楽しさ」を見せていく社会の先輩

企業人事は…
「マーケットと貢献力」を丁寧に理解させてくれるプレゼンテイター

今、求められる企業人事。
それは「働く価値と魅力」を、客観的にそして論理的にプレゼンテーションできる最高の営業マンなのです。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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