飲酒・アルコール

二日酔いの頭痛・吐き気・倦怠感…原因別の対処法・予防法

【医師が解説】頭痛・吐き気・倦怠感など様々な症状を引き起こす二日酔い。アルコールそのものだけでなく、アセトアルデヒドやその他の影響が複雑に関係して、症状を起こすと考えられています。アセトアルデヒドによる肝臓への負荷、胃腸障害、メタノールや不純物、一時的な離脱症状などの原因別に、対策法を解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

二日酔いとは……頭痛・吐き気・倦怠感など症状は様々

二日酔いで頭痛・吐き気

飲みすぎた翌日の二日酔い。頭痛や吐き気、だるさなどの症状はなぜ起こるのでしょうか

実は二日酔いには正確な定義がありません。アルコール代謝の能力以上に摂取すると、アルコールそのものの影響、アセトアルデヒドの影響、その他の影響が複雑に関って、さまざまな症状を起こします。つまり、アルコール飲料の摂取による影響が翌日にも残っている状態が「二日酔い」と考えられています。

一般にアセトアルデヒドばかりが二日酔いの原因とされていますが、実はそれだけでなく他の要因の影響の方が多いと言われています。したがって、二日酔いは個人差が大きく、症状やその程度もさまざまです。

今回は、まずは従来から言われているアセトアルデヒドなどが原因の二日酔い症状とその対策法について解説した上で、考えられるその他の原因とそれぞれの対策法をご紹介します。
 

アセトアルデヒドによる肝臓への負荷が原因の二日酔い

実は二日酔い時には、血液中のアセトアルデヒドはほとんど検出されません。肝臓で速やかに代謝されるからです。しかしアセトアルデヒドの代謝を優先するために、他の代謝が遅くなり、そのために様々な二日酔いの症状が起きている可能性があります。

飲酒後に吐き気を感じたり皮膚が赤くなったりする原因としては、アセトアルデヒドの関与も指摘されています。ただ、その蓄積が原因である可能性は低いです。

対策としては飲酒時も適切な量のアルコールに留めて、肝臓に負担をかけないことです。
 

吐き気・食欲不振・下痢などの二日酔い症状……胃腸障害が原因に

胃粘膜のバランスはアルコールによって崩れます。そのため胃腸障害が起き、嘔気・嘔吐・食欲不振・腹痛・下痢などの症状が起こります。

対策法としては胃腸への負担を減らすことを考えましょう。空腹時の飲酒を避けること。また、これらの症状が二日酔いで出やすい人は、アルコール度数の高いアルコール飲料を避けるのがよいでしょう。
 

全身倦怠感・だるさなどの二日酔い症状……メタノールや不純物も原因に

メタノールは全身倦怠感の原因になります。アルコールの製造過程で混入するメタノールは、分解に時間がかかるために体内に残りやすいです。また酒の不純物であるエステルは酒の風味や個性を決めますが、一方で二日酔い症状も引き起こしやすくなります。

これらの不純物の含有量はブランデー・赤ワイン・ウイスキーに多く、ビールでは比較的少ないです。

対策法としては自分に合ったアルコール飲料を選択することです。またアルコール量が多くなると、不純物の摂取量も増えるので、飲む量を減らすことも1つの対策です。

次にさらに踏み込んだ二日酔い症状についても見てみましょう。
 

アルコールからの一時的な離脱症状として起こる二日酔いの対策法

例えばアルコール依存症の場合、アルコールが体内から抜けた状態では、睡眠障害・発汗・手のふるえ・血圧の上昇・不安やイライラ感などの離脱症状が出てきます。二日酔いの症状の中にもこれらに共通するものがあります。

空腹の状態でアルコール飲料を長時間かつ多く飲むと、血中のアルコールが残りやすくなり、体内からアルコールが分解されて消失するときに、これらの症状が起こりやすくなります。対策法としては、アルコールを飲むのは食事と一緒にして空腹を避け、短時間で適量にすることです。

もしもすでにアルコール依存気味の場合は、それに対する適切な治療が必要です。飲酒量を徐々に減らしていき、禁酒に対する薬も指示に従って服用します。この場合の薬としては、アセトアルデヒドの分解を抑制し、飲酒後の不快感を起こす作用があるシアナミド、ジスルフィラムなどを用います。アセトアルデヒドの分解を抑制するために二日酔いを起こすことになります。

また、アカンプロサート(商品名:レグテクト)は飲酒欲求を抑制することにより、飲酒への欲求を軽減させますが、飲酒している人が服用してその飲酒量を少なくする効果はないとされています。ナルメフェン(商品名:セリンクロ)は飲酒量を低減させる効果があります。
 

尿量や血圧に関連するホルモン異常による脱水・低血糖が原因の二日酔い対策法

二日酔いになると抗利尿ホルモンが増加し、体内の水分バランスが崩れて、むくみや全身倦怠感などが出てきます。これはアルコールが尿量を減らす抗利尿ホルモン、尿量や血圧を調整するアルドステロンとレニンというホルモンに影響を与えるためです。アルコールがこの抗利尿ホルモンが出てくるのを抑えてしまうため尿量が増え、体内の水分が不足して脱水になります。アルコール飲料でおしっこに行きたくなるのはこのためです。

二日酔いでは、血糖を下げるインスリンや血糖を上げるグルカゴンの分泌にも変化が起こります。そうして低血糖が起こり、 頭痛・嘔気・嘔吐・全身倦怠感・めまい・睡眠障害・感覚や認知の障害・うつ気分になります。

対策法としては、できるだけ水分補給を心がけ、血糖など上げるためにも糖分や炭水化物を摂取しましょう。糖分、炭水化物の取り過ぎは肥満や糖尿病の原因になりますので、食べすぎないようにします。
 

酸塩基平衡のアンバランスや電解質の異常が原因の二日酔い対策法

体の酸塩基平衡(さんえんきへいこう)、つまり酸性かアルカリ性かのバランスが酸性に傾いてしまうと、その程度によって二日酔いの度合いも変わってきます。頭痛・嘔気・嘔吐・全身倦怠感・めまい・睡眠障害・感覚や認知の障害・うつ気分などが起こります。

これらの症状を避けるために、電解質の異常に対しては、イオン飲料などで塩分など補給しましょう。水分摂取と合わせて補給するとよいでしょう。
 

炎症反応の亢進による二日酔い対策法

二日酔いになると、炎症反応のマーカーが高値になることが報告されています。このような場合は、消炎鎮痛薬を使用します。特に、頭痛などがひどい場合は、鎮痛薬を使用します。
 

睡眠や生体リズムの乱れによる二日酔い対策法

飲酒をすると睡眠が浅くなり、睡眠時間を長く取ったつもりでも睡眠不足状態になりやすくなります。睡眠不足の症状として、頭痛・全身倦怠感・感覚や認知の障害・うつ気分などになりますし、これらによってさらに睡眠障害が起こってしまうこともあります。

これらの症状を避けるためには、眠くなるまでアルコールを飲んだりせず、セーブすることです。飲みすぎてそのまま寝てしまうことがある方は、特に注意必要です。


二日酔い症状を引き起こす様々な原因と、それぞれの対策法をご紹介しましたが、一番の対策は何でしょうか? 当たり前ですが、「アルコール飲料を飲まないこと、飲む時は適切な量で止めること」です。飲酒は適量に留めて楽しむようにしましょう。
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