投資しない、貯蓄しないことを正当化しているだけ
以前、マネー誌の編集者をしていたときに、定期的に読者を呼んで、ご意見を伺っていました。そのときにみなさんがよく口にしたのは、「まだまだ勉強が足りないので、投資はしません」という言葉でした。こうした会合に参加してくれるだけあって、みなさんしっかりと貯蓄をされており、家計管理や、貯蓄の目標など、実にまじめに取り組んでいる方ばかりでした。貯蓄額からすると、もう投資を始めてもなんら問題ないような方たちです。問題ないというのは、ひとつには300万円程度の貯蓄があり、いざというときに困ることがない、着実に貯蓄するクセが身に付いていて、毎月決まった額を貯められるということです。
ここまでくれば、毎月の貯蓄のなかから半分程度は、積立投資に回してもいいはずですし、そうすべきなのです。しかし、「まだ投資は、私には早い」と言います。
これは、どういうことでしょうか。
心理面まで聞いたわけではないですが、おそらくこの方たちは、積立投資を始めるだけの十分な知識があったはずです。しかし投資は躊躇する。これはもう、勉強していないから、ということではないでしょう。
人は、自分の強みはなかなかわからないものですが、弱みやコンプレックスは自覚しているものです。この方たちの弱みは「勉強していないこと」ではなく、「投資にチャレンジする勇気」が足りなかったのです。それを認めたくないために「勉強していないから」という理由付けをしていたと考えられます。
同じように、日常で自覚していることは思い当たりませんか。
「今の会社の待遇には不満があるけれど、職場の雰囲気はいいから、転職しない」
→「転職に失敗するのが怖いから、収入には不満だけどこのままでいい」
「会社の会議に出席しても、どうせ上層部が決めちゃうから、自分の意見は言わない」
→「発言して否定されたらイヤだ。だから会議中は黙っているに限る」
「老後資金が不安だ。年金不足は国が悪い!」
→「年金不足分は自分で用意すべきななのはわかるけど、国が悪いのに!」
どれも、現状を変えることに躊躇する自分はわかっていて、変われない自分を正当化するために、人のせい、社会のせいと理由づけしているにすぎません。本当の気持ちは、変えたい、変わりたい、にも関わらず。
少額で投資できる今は、失敗のリカバリーもしやすい
人生のなかで、チャレンジしなくてはいけないことは、それほど多くはないでしょう。それほど興味がないのにムリに海外旅行に出かける必要はないですし、マラソンブームだからと言って、苦手な運動をして苦しむ必要もありません。ダイエットだからと修行僧のような食事では、生きる楽しみが半減してしまいます。
人生での大きなチャレンジは、もしかしたら、結婚かもしれません。出産・育児かもしれません。転職や起業かもしれません。どれも人生が大きく変わる大きなチャレンジでしょう。では「お金」に関してはどうでしょうか。
まさかギャンブルや投機がチャレンジとは思いませんよね。それは「ばくち」ですから。
お金に関してのチャレンジは、実は人生のチャレンジよりも、ハードルがもっと低いもので、だれにでもできることです。ましてやちゃんと勉強しないとチャレンジしてはいけないものでもありません。
たとえば、投資。
確かにひと昔前なら、多額の投資資金を準備して、それなりの理論武装が必要でした。しかし、現在は、毎月100円、1000円から投資ができる時代になったのはスゴイことです。このチャンスを先延ばしして、勉強してからと言っていたら、その勉強の終わりはどこにあるのでしょう。いつになったら投資できるのでしょう。今は、すぐ始めていいのです。毎月500円の積立で外貨投資ができる、毎月1000円の積立で投資信託を購入する。万一、失敗したなと途中で気づけば、買い直しをすることも簡単にできます。
さらに、最近ではクレジットカードなどのポイントを利用して、投資することもできるようになっています。
個別の銘柄の見極めができないからと、投資するのを先延ばししていたら、買いのタイミングを逃してしまうでしょう。個別銘柄の良し悪しが判断できなければ、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)といった株価指数に連動するETF(上場投資信託)を定期的に購入するという手もあるのです。
よく、売買のタイミングがわからない、という人もいます。短期的な売買で利益を出そうと思えば、少しの相場変動も注意しなければなりません。少しでもソンをしないように、ほんの少しでもトクをするようにと、株価の動きを勉強するようになるでしょう。しかし、プロでもこの時が絶好の売買のタイミングだとはわからないものです。あとになってからわかるのが相場というものです。
長い目で見れば、相場は10年周期でチャンスがやってきます。途中で値下がりしても、いずれ上昇して利益を出せる可能性はあるのです。長く投資市場に参加していれば、そのチャンスに遭遇する回数も増えるのです。何もしていなければ、ソンをしない代わりにトクもないのです。
特に、老後資金は20年、30年先に使うもの。若いうちから積立投資をしていれば、相場の変動リスクを軽減することも可能なのです。
一度決めた金融機関と生涯付き合う必要はない
貯蓄に関しても同じです。お金が貯まらないと言う人は、お金を貯めるチャレンジをしていないだけ。どこの金融機関がトクか、どの貯蓄商品がいいか、などと勉強している間に、1日でも早く貯蓄を始めた人との差は開いていく一方でしょう。貯蓄商品は、基本的には元本保証で、中途解約しても普通預金の金利以下にはなりません。やってみて、自分の生活スタイルに合わない、自分の性格に合わない、貯蓄システムが不便だった、もっといいサービスの金融機関が見つかった。そう思ったときに、貯蓄先を乗り換えればいいのです。いまどき、給与振込みの口座しか持っていない、というのは、お金を貯めるチャンスをみすみす逃すようなものです。
また、気になる金融機関があれば、先に口座開設の準備をしておくのもおすすめです。ネットで申し込みができるようになったとはいえ、実際に口座が使えるようになるまでには数週間かかります。今なら、ボーナスの預け先などを検討しはじめてもいい時期。金利を見てからでは、タイミングがズレてしまいますので、これまでオトクと言われている銀行を複数候補として、口座開設だけしておいても問題ありません。
一度決めたからといって、同じ金融機関、同じ貯蓄商品を使い続けなければならない理由はありません。いまどき、メインバンクを決めても、住宅ローンで優遇されるわけではありません。
貯蓄しながら勉強しても遅くはありません。その都度、自分にとって使い勝手のいい金融機関やマネー商品を使い分けていくことが大切です。お金に関することは、生涯、勉強が必要だとも言えるでしょう。
ただし、貯蓄のうち、子どもの教育費に関しては、学資保険やこども保険で準備するのか、銀行の積立自動定期で準備するのかは、早目に決めたほうがいいでしょう。学資保険やこども保険の場合は、子どもの年齢がある一定以上になると、加入そのものができなかったり、加入時に一時払いで保険料を払い込む必要があるなど、制限がでてきます。子どもの教育費については、妊娠がわかった段階で、情報を集めて準備しておくことをおすすめします。
世の中の動きは目まぐるしく変わっていきます。金融機関の商品内容、サービスも次々と変わっていきます。勉強も大事ですが、トライアンドエラーの精神でお金のこと、チャレンジしてみませんか。
【関連記事をチェック】
目指せ100万円!面倒くさがり屋こそ、先取り貯蓄
運命を変えるお金の使い方、貯め方、5つのコト
4月から実践したいマネー10カ条
20代でゼッタイ身に付けたい!お金の知恵