旭化成ホームズがシニアライフ研究所を設立
旭化成ホームズは時代のライフスタイル変化の研究に非常に熱心な住宅企業でもあります。これまで二世帯住宅研究所、共働き家族研究所、ペット共生住宅研究所など様々な社内研究機関を立ち上げ、研究結果を世に発表してきました。そんな中、超高齢化の急進を受けて同社は2014年4月に「シニアライフ研究所」を設立。同社はこれまで二世帯住宅の研究開発に注力しており、二世帯住宅研究所も立ち上げていますが、「単世帯の高齢者世帯の増加や、実子が離れてサポートするケースが増えており、そのスタイルも含めて幅広い研究をするため設立したとみられます。
今回の調査は、元気な自立した75歳以上後期高齢者の生活実態や本音を把握するため、同社が10年ほど前に建設した自立高齢者向け賃貸住宅「ヘーベルVillage」の入居者および離れて住む実子にインタビューしたもの。80代前後の高齢者はなかなかネットアンケート調査というわけにもいかず、同社の丹念かつ丁寧な訪問インタビューで得られた声は住宅業界にとっても貴重な材料になりそうです。
ここでは多くの調査結果の中から、ガイドが特に関心をもった部分について紹介します。まず「自宅のくらしに豊かさを感じている70代は7割」という事実。年代別でも30-50代以上に70代は自宅暮らしに満足しており、「老後=老人ホーム」というイメージを覆す、ヨーロッパ的な豊かさに通じるものがあるのではないでしょうか。
日本ほどではないにせよ同じ高齢化に局面している北欧やヨーロッパでは、老人ホームやケアハウスに入居する高齢者はごく稀で、多くは当たり前のように自宅で最終期を過ごします。現在でも老人ホーム入居は3-5年待ちという中で将来の受け皿と介護人材が不足するのは明白で、国も厚生労働省などが在宅を主にした福祉政策を考えているのと、この調査結果はある意味ニーズを合致するものといえそうです。 また、自宅で過ごす70代の豊かさを感じる対象に、男女差があるのも興味深いです。70代男性は「家族と過ごすこと」に豊かさを感じており、女性は60代は「家族で過ごす」ことに豊かさを感じた後、70代は「趣味や好きなことをする」ことに豊かさを感じています。
この女性の変化はおそらく、60代の時は小さくてよく来てくれた孫たちも成長し、頻繁に遊びにきたり集まったりすることがなくなったという家族側の変化も関係していると思われますが、以前ガイドがAllAbout生活トレンド研究所と行った調査結果とも重なり裏付けるデータともいえます。
45歳以上の男性「これからは妻と楽しみたい」女性「同年代と交流したい」
そうは言ってもやはり70代、すべて自分で生活できるというわけでもなさそうです。単世帯で暮らし高齢の両親の支援に、どういう人が関わっているかを同社が確認したところ、実子、なかでも男性より女性のほう(つまり娘姉妹)が高く関わっていることがわかりました。一方、「自分の配偶者(嫁や婿)」の関わりは少なく、それなら「外部サービス」を利用するスタンスも浮き彫りになりました。
日々の生活支援は実子とくに娘がサポート
さらに、高齢者の自立度は食事・排泄・移動などを介助なしでもできるかで評価されますが、実際の生活ではそこまでいかなくても、通院の付き添いや買い物、日々の食事などの生活サポートも必要になるケースが少なくありません。後期高齢者の生活サポートをどこでどう行うか、真剣な議論が求められる
こうした単身・単世帯の高齢者急増という局面は、当然ながら日本では突然押し寄せてきた初体験であり、それに関しての研究はまだ十分といえないのが実情。最近増えている「サービス付高齢者住宅」も「介護型」の供給が多く、その狭間にある「自立してるけど生活サポートも欲しい単世帯の後期高齢者」とその家族が、ともに豊かに暮らすための住まい方の選択肢は、今後ますます求められると思われ、ウォッチしていきたいところです。