前向きな構想の下地は、震災前の村づくりに
村長の菅野さんは、2001年~2006年まで行われた「愛の句碑」(愛をテーマに俳句を募集し、選ばれた句を地元産御影(みかげ)石に彫って建立する)事業を実行するなど、アイディアマンでもあります。震災後、俳句の選者であった黛まどかさんの呼びかけで、句碑のある村のシンボル「あいの沢」(キャンプ場)の清掃が行われるといったネットワークにつながっています。震災前に建てられた、飯舘村の魅力が伝わる施設も数多くあります。
飯舘村にある飯樋小学校を見学しましたが、この小学校は、教師が管理しやすい場所という発想ではなく、子どもにとって居心地のいい場所として、保護者はじめ地域の人たちとのワークショップなどを経て設計された小学校です。隠れ家や野外ステージ、地域交流のためのサロンなども設けられ、県産材が至る所に使われています。震災前には近隣住民の合同運動会が、校庭で開催されていました。
こんな素晴らしい小学校も今は利用されていませんが、地域住民と一体となって村のことを考える仕組みが培われていたわけです。
低学年用に室内に木登りができる大木も置かれているという飯樋小学校の校舎
震災前、校庭では近隣住民による合同運動会も開かれていた校庭にもフルコンバックが置かれていた
「までいな暮らし普及センター」(までいな家)
菊池製作所福島工場
福島県が風評被害の対策として取り組んでいる事業のひとつに、「福恋」シリーズがあります。お茶の専門店として知られている「ルピシア」(本社東京都渋谷区)とコラボレーションした紅茶です。第2弾となる「福恋いちご」では、飯舘村の「いいたていちごランド」が参加しています。土壌改良したビニールハウスで育てたいちご(品種雷峰)をフリーズドライして混ぜた、イチゴの香りが漂う紅茶となりました。
村長のご厚意で私も一缶いただき、自宅で試してみましたが、いちごの香りが口の中に広がるフルーティな紅茶で、ミルクティーにしても美味しく飲めました。
福島県とルピシアがコラボした「福恋いちご」(非売品、2015年3月16日までプレゼント対象)
帰村できない人も交流できる拠点づくりを
震災前に1700世帯だった飯舘村の村民は、今は3200世帯になっています。親や子世帯が異なる場所に住むなど、分散化している結果です。帰村に向けて前向きに取り組む村長は、帰村できない人もいると考えて、そうした村民も交流できる拠点づくりを構想しています。また、2016年から太陽光発電事業に取り組むなど、いろいろな知恵を集めて、村の活性化に取り組む計画を進めています。訪問したその日、仮庁舎のある飯野町では「飯野つるし雛まつり」が開催されていました。商店街を中心に多くの場所でつるし雛が飾られ、マップを手に楽しげに通り歩く人たちとすれ違いました。
飯舘村の商店や住宅にも、通りにも、こうした人の気配はありませんでした。一日も早く、飯舘村に村人の笑顔が戻ってほしいと願っています。
つるし雛の前で。中央が村長と筆者、左から2番目が副村長の門馬伸市さん、右端が建築家の佐川旭さん。ほかにAll About編集部など