仮設住宅の劣化が進み、新たな受け皿が必要な状況
まず、住まいについての復興の状況を確認しましょう。復興庁がまとめた「復興の現状」(2014年11月13日付)によると、避難者は2013年10月時点の約28万人から2014年10月には約24万人に減少していました。仮設住宅の入居状況(応急仮設住宅とみなし仮設住宅の合算)は2013年9月の約10万人から2014年9月には約9万人に。ちょっと古いデータですから現状を正確に反映しているものではありませんが、まだ住まいの復興が進んでいるわけでないことがわかります。
応急仮設住宅(以下、仮設住宅)は震災後に約5万戸が建設されました。しかし、未だに「撤去された」という事例はほんのわずかしかないようです。読売新聞の報道によると、「2015年1月までに撤去されたのは、1%に満たない計467戸」だといいます。
4年が経過したのにです。仮設住宅というのは入居期限が2年。つまり、本来はそれくらいの期間しか居住に耐えられない性能の建物であるにもかかわらず、災害公営住宅などの新たな受け皿が完成しないため、仕方なく使い続けている状況なのです。
私もこれまで何ヵ所かの仮設住宅の中に実際に入ったことがありますが、断熱性や遮音性などといった建物の基本性能は低く、決して住みよい居住空間とはいえません。劣化もずいぶんと進んでいました。
そこで、仮設住宅などで暮らしていらっしゃる方々の、本格的な生活再建の場となるのが「災害公営住宅」です。「復興住宅」などとも呼ばれます。その定義は次の通りです。
まだ2割に満たない災害公営住宅の供給
「災害により住宅を滅失し、自力での住宅再建が難しい方のための公的な賃貸住宅。基本的には市営住宅と同様となり、所得による入居制限が緩和されます。低所得者に対しては数年間の家賃の低減化が図られます」(宮城県石巻市ホームページより引用)その現状は、復興庁がまとめた「公共インフラの本格復旧・復興の進捗状況」によると、災害公営住宅は、復興3県(岩手・宮城・福島)の合計で約3万戸の供給が計画されています。
このうち2014年12月末時点で、「完了」は4933戸で16%、「用地確保済み」を合わせると85%となっています。なお、完了というのは、建物の建築工事が終了したものをいいます。
このほか、住宅の復興に関連するもので、「集団防災移転促進事業」(復興まちづくり)もあります。これについては、同時点で地区ベースで34%が完了、着工を含めると95%の進捗率。戸数ベースでみると完了が21%で、着工を含めると98%に達しています。
ちなみに、集団防災移転とは「災害が発生した地域、または災害危険区域のうち、住民の居住に適当でないと認められる区域内にある住居の集団的移転を促進するため、当該地方公共団体に対し、事業費の一部補助を行い、防災のための集団移転促進事業の円滑な推進を図るもの」(国交省ホームページより引用)となっています。
誤解が無いようにしてきしておきますと、これらのデータはあくまで2014年12月末時点のもの。現在、さらには2015年3月末にはもっと進捗率が高まっていると思われます。
災害公営住宅も、一般的な住宅と同様、3月末を完工・引き渡し日とするケースがあるからです。ただ、いずれにせよまだ完工に至っていない災害公営住宅があり、それは未だに仮設住宅暮らしを解消できていない方々が数多くいらっしゃるということです。
さて、私は2015年2月初旬に福島県内にある完成した災害公営住宅、仙台市内で建設中の災害公営住宅を取材する機会がありました。次のページではその時、見聞きした内容も含めご紹介したいと思います。