療養泉は全部で10種
温泉のうち、特に一定の成分を含む療養に向いている温泉を「療養泉」と言い、環境省から出されている「鉱泉分析法指針」でこの療養泉が定義されています。温泉も泉質で選びたい・・・
療養泉は10種類に分類されます。
- 単純温泉
- 塩化物泉
- 炭酸水素温泉
- 硫酸塩泉
- 二酸化炭素泉
- 含鉄泉
- 酸性泉
- 含よう素泉
- 硫黄泉
- 放射能泉
実際の温泉は単一ではなく、どれか1つが主成分となり、他は副成分となって組み合わされています。
療養泉の「適応症」とは?
また、それぞれの療養泉に効果が期待される病状のことを「適応症」と言います。例えば、腰痛症や神経痛と言った病状です。この適応症は温泉地が勝手に決めているわけではなく、環境省の指針に従って、この温泉にはこの適応症、という具合に決められたものです。通常、脱衣室などに掲示してあります。この指針に32年ぶりの見直しがあり、適応症が変更され、2014年7月に環境省から発表されました。泉質別の温泉の特徴と適応症
それでは、次に各泉質別の特徴と適応症を見ていきましょう。ポイントとして、この特徴と適応症くらいを押さえておけば、温泉通のお友達にも自慢できます。今回は、主に日本で用いられることの多い浴用(湯に浸かる)の適応症に触れています。また、すべての泉質には療養泉の一般的適応症が共通してあります。
1) 単純温泉
■特徴日本で一番多い温泉です。単純温泉だからといって温泉成分が入っていない訳ではありません。一部の成分が極端に多い訳ではないため、「単純温泉」という名前になっています。その分、刺激が少なく子どもや高齢者にもお勧めの万人向けの優しい温泉と言えます。
温まり効果は水道水より高いことが報告されています。この泉質についてはメンタル系の適応症が目立ちますね。単純温泉の中には保湿作用のあるメタケイ酸を多量に含む温泉もあり、昔から美肌の湯と言われている温泉も多い泉質です。一言で「単純温泉」と言っても、実はどこの温泉も同一な訳ではなく、様々な成分が含まれています。
■適応症
自律神経不安定症、不眠症、うつ状態
2) 塩化物泉
■特徴日本では単純温泉に次いで多い泉質です。高齢者や病気の回復期にお勧めの温泉です。海水の成分に似た塩分を含んでいます。入浴後、肌に付いた塩分が汗の蒸発を防ぐため、保温効果が高いです。「熱の湯」とも言われることもあります。
長期滞在して温泉療養を行っても「湯あたり」といった反応も少なく、多くの人にお勧めの泉質です。日本ではあまり行われていませんが、ヨーロッパでは、この温泉水の湯気を吸い込むことで痰が出しやすくなることから、吸入療法にも使われています。
■適応症
きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
3) 炭酸水素塩泉
■特徴日本では「美肌の湯」と言われる代表的な泉質です。その理由としては、皮脂が乳化され、洗い流した後で皮膚の表面が滑らかになるほか、湯上りにさっぱりした清涼感があるので、「冷の湯」とも言われます。
ごく最近の研究では褥瘡(床ずれ)様の傷の治りを改善するという報告があります。飲用では胃酸の出過ぎを中和するなどの作用があります。湯気を吸い込むことで痰を出しやすくするなどの作用もあります。
■適応症
きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症
4) 硫酸塩泉
■特徴伝統的に「傷の湯」などと言われている温泉に多く、傷の治りを早める効果があると言われています。その理由として、血流の改善効果や保温効果があるためだと考えられます。保湿効果もあり、適応症には皮膚乾燥症も新たに入りました。塩化物泉と同様に温まり効果の強い泉質です。
■適応症
きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
5) 二酸化炭素泉(炭酸泉)
■特徴日本の温泉のわずか0.6%という、少ない泉質です。最大の特徴としては、血管を拡げる作用が強く、血流改善効果が強いということです。二酸化炭素が皮膚から吸収されて血管を拡げます。また、低い温度でも温かく感じるという特徴もあります。これは皮膚にある冷たさを感じる仕組みの働きが抑えられ、逆に温かさを感じる仕組みの働きが強くなるためです。そのため、体に優しいぬるい湯にも寒さを感じずゆっくり浸かることができます。最近は、スーパー銭湯などで人工炭酸泉をよく見るようになりました。
■適応症
きりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症
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