アドバイス1 貯蓄をするなら「すべての支出」を改善すべき
先に希望のある話をしましょう。相談者の「高尾山子」さんは世帯収入も高く、結果的にはすぐに引き出してしまうため表面的ではありますが、先取り貯蓄という効果的な手法も実践しています。こういう人は、本当に変わることができれば、一気に貯蓄体質になります。そういう例をいくつも見ています。貯められるポテンシャルは十分あると言っていいと思います。では、なぜ貯蓄をした残りで、生活費をやりくりできないのでしょうか。要は、支出の仕方。これに尽きます。本人は、自分の衝動買いが原因だと思っていますが、実際は違います。食費から教育費、趣味娯楽費、雑費まで、すべてが見直すべき対象。おしなべて高めなのです。
たとえば教育費。データによると長女の方は、ピアノ、バスケットボール、そろばんを習って、勉強は家庭教師にゼミ、さらにこの春から英会話も……。お子さんは本当に全ての習い事をしたいのでしょうか。お子さんとよく話し合って、中身を絞ることも積極的に検討してください。
話はややそれますが、こういう状況で怖いのは、親が子の望むものを際限なく与え、子どもはそれが当然のことだと思ってしまうこと。親のお金の使い方は、子どもの将来に影響を与えます。我慢のできない、そんなお金の使い方をする大人になってしまうかもしれません。
アドバイス2 思い切ってスマホとクレジットカードを手放す
貯蓄目標額をきっちりと決めて、各支出について十分に見直し、予算内で必ずやりくりするということを実践しなければ、この家計は貯まりません。では、本人の衝動買いは、どうすれば防ぐことができるか。ちょっとした依存症的な状況のようですので、小手先の方法よりも少し思い切った荒療治をお勧めしたいです。そこで、この際、スマホは使わない。さらにクレジットカードも手放す。ネットでの買い物はしたくてもできない状況をつくることです。
おそらく、「高尾山子」さんはどうしても洋服が欲しいわけではないと思われます。袖を通してない服が何着もあるのではないでしょうか。買う行為そのものでストレスを発散している。ならば、本来改善すべきは「お金の使い方」ではなく、「ストレスの対処法」です。そのためにもまずは「買う」行為を強制的に断ってみましょう。
クレジットカードがなければ、生活は不便です。しかし、現金で買うということも、支出を抑える効果的な方法のひとつなのです。使えば、お金が減る。それは自分が働いていた得た対価としての大切なお金です。現金生活は、そういう当たり前のことを気づかせてくれるのです。
ただ、これは表面的な対処法です。最終的に大事なのは本人のストレスの解消です。これを解消しなくては、元に戻ってしまうリスクがありますので注意してくださいね。
アドバイス3 子どもたちと過ごす時間を率先して作ろう
そこで家族の力を借りてはどうでしょう。と言っても、家族と過ごす時間を増やすだけです。普段、忙しく働いているのですから、すれ違いも多いのでは。子どもたちとともに過ごし、お互いよく話をする。その時間はストレスを忘れさせてくれるのではないでしょうか。それと心配されている教育費ですが、現状のままでは、娘さんが私立中学に通う4月から、実質月額5万円がアップします。この時点で、毎月赤字となるので、完全にボーナス依存の家計になってしまいます。
ボーナスの支給額が大きいので、それでも十分カバーできますが、給与と違って、その額は業績に大きく左右されます。やはり毎月きっちり貯蓄のできる家計を目指すべきでしょう。
たとえば、お子さんの大学の学費だけでも、私立文系で約400万円×2人分。学資保険の満期金を差し引いても、400万円は用意しなくてはいけません。また、自宅から通学できない場合、一定の仕送りも発生します。それも踏まえて、計画的に貯めていく必要がありますし、この世帯収入なら可能だと思います。
ご主人の老後資金も心配されていますが、個人年金保険に加入するより、今は貯蓄を増やすことが重要。家族4人、住宅ローンも抱えて、貯蓄が23万円しかないという事実は、十分に問題視すべきこと。突発的な大きな支出があれば、その時点で貯蓄は底をつきます。今月から貯蓄家計にすることが、この家計の最優先事項です。
ただ、貯蓄額は増えていませんが、ボーナスから住宅ローンの繰上返済をコツコツされていたことは、とてもすばらしかったと思います。ローン残高から判断して1000万円程は入れている様子。繰上返済のタイプは主に期間短縮型だと思われますので、返済期間も7~10年程度は短縮されているでしょう。
今後しばらく繰上返済は休んで、貯蓄にシフトしていくとのこと。ならば、毎月の貯蓄分と合わせれば、十分な貯蓄ペースになります。頑張ってください。
相談者「高尾山子」さんから寄せられた感想
八ツ井先生、的確なアドバイスありがとうございました。自分たち家計の内情は、なかなか表ざたには出来なくて……それでも相談したかったので今回はお世話になりまして本当にありがとうございました。早速、4月から家族の生活環境も変わるのでこれを機会に見直しと実行をしていきます。いただいたアドバイスを素直に受け止め生かしていきたいと思います。教えてくれたのは……
八ツ井慶子さん
【関連記事をチェック】
59歳教育費で貯蓄ゼロ。住宅ローン残債が2000万円
赤字家計に悩む38歳女性。双子の教育費も心配
40歳独身女性、月収12万円。老後の備えをどうすべき?
出産後に妻が退社。月10万円の住宅ローン負担が重い
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ