ゼロサム、つまりあなたと誰かの「見立て」の違いが利益(損)になる世界
為替が円安に振れたり、円高に振れることでお金が増えたり減ったりすることは事実です。1ドル=90円のときに、100万円分ドルを買っておき(当時11111ドル買えた)、1ドル120円の時代に換金すれば133万3333円にお金が増えています。為替の変動だけでお金が増えたことになります。しかし、為替の本質はゼロサムです。あなたは円安に振れる可能性を「見立て」て、誰かからドルを買いました。そのとき誰かはあなたとは異なる「見立て」や事情によりドルを売っています。
為替の売買は売る人と買う人のセットで成立しますから、シンプルにいえばあなたの為替の「得」は誰かの「損」になるわけです。株式投資ならみんな幸せになる可能性がありますが、FXでみんなが幸せになることはないのです。
金も同様です。金そのものが成長するのではなく、金を欲しがる人の希望が相対的に金の価格を決定しています。リーマンショックの直後などは社会全体に不安が高まっており、むしろ金は「減らないことがいい!」と考えられ値段が高まりました。しかし、アメリカを中心に経済の回復がみられると、金はピーク時より約30%ダウン(ドル建てベース)しているほどです。
よく、金は安心、安定のイメージがありますが、実際にはかなりの変動があります。金に対する「評価」が下がり、金を手放す人が多くなれば、金の価格は大きく下がることもあるのです。
もちろん金とFXで運用したいならそれは自己責任でやればいい
さて、私は金やFXで運用をすることを否定しているわけではありません。投資としての性格が異なることを知ったうえで、個人が好みとして金やFXで運用するのであればそれは自己責任の範囲でやればいいと思います。しかし、「金は安全・安定」とか「FXは手軽におこづかいが稼げる」というような軽い印象でお金を投じることはまったくオススメできません。むしろそんな意識であるなら、運用をしないほうがいいと考えます。失敗する可能性が高まるからです。
まじめに投資をする場合にも為替を避けて投資はできません。先ほどの例のようにApple株を買いたいと思えばドルを得て外国の株を買うしかないからです。ドルを買えば為替の騰落に資産価値はほんろうされます。
投資においては、自分が運用する対象の性格をちゃんと理解し、無理のない範囲で投資金額を決定することが大切です。あなたの「知らない」を誰かが救済してくれることも、初心者にハンディキャップをもらえるプレイルームも投資の世界ではないのです。
投資を甘く見た人は、投資の世界では絶好のカモだと覚えておきましょう。