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資産別投資法 資産5000万円と1億円では投資法は違う?

資産が異なれば、投資の仕方も変わってきます。資産が順調に増えていった場合に、何をどう変えていけばリスクを押さえられるのでしょうか?最小のリスクで必要リターンを獲得するための資産別投資法をご紹介します。

北川 邦弘

執筆者:北川 邦弘

はじめての資産運用ガイド

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資産7000万円、投資歴30年、49歳のベテラン投資家からのご質問

このコーナーでは、読者からの悩み相談を取り上げています。気になったものを取り上げていきます。相談シリーズの3回目は、ペンネーム”若隠者さん”(49歳シングル・現在無職・神奈川県)からのご相談です。
 
投資を始めて30年。資産のうち6000万円を投資していますが、投資金額の年平均リターンは3%程度です(キャピタルゲインのみ)。金融資産は約6000万~8000万で現在の投資割合は国内株(リート含む)50%、国内債権20%、外国債券10%、外貨10%、円預金10%、他に貴金属現物(金・プラチナ)約3.5Kg。自宅以外の不動産(負債なし。年約200万の収入)があります。

サブプライムショックで金融資産1億円の壁に跳ね返されてから6000万~8000万円を行ったり来たりでした。ここ数年の上昇相場では資金の一部を中期波動に合わせたブル・ベア型の指数連動ETFでボラがあれば利益が出るような投資手法を試してまずまずの成績を上げてます。

先日、勤務していた会社が倒産してしまい現在無職で再就職しようか早期リタイアして資産運用で暮らしながら 趣味に没頭しようか、決めかねています。アドバイスや注意点などありましたらお聞かせください。また、5000万円と1億では投資手法を変えた方が良いのでしょうか?

神奈川在住・若隠者さん シングル・持ち家 無職 不動産収入年間200万円 資産7000万円(そのうち投資額6000万円)
 

長期分散投資を前提とすれば

若隠者さん、こんにちは!ファイナンシャルDr.の北川です。ご相談、ありがとうございます。30年の投資経験を積み、7000万円の資産があってまだ49歳。素晴らしいですね。しかも、金融資産は年率3%で運用できていて、家賃収入が年200万円あるのですよね。ナイスです!お困りのことが見えないので、何をアドバイスしようか迷ってしまいます(笑)。

ただひとつ、気になるのは、「6000万円~8000万円を行ったり来たり」という部分です。サブプライム・ショック以降は、世界の資産は年率10%超で成長してきた6年間ですから、「行ったり来たり」とは意外です。

そこで投資手法をお尋ねなのかと思いますが、手法の前提となる戦術について、確認させてください。中期的なトレードもされているようですが、私は長期の分散投資をするという戦術を貫いていますので、その限りでご回答します。
 

年率3%を実現する資産配分

長期投資とは、資産を最適配分で持ち続けるだけ。売り買いを極力避けて、マーケットの大波に乗ることです(トレードや投機で小波に期待しないことが安全のルールだからです)。若隠者さんの現在の資産配分は、次のようになっています。
 
  • 国内株:50%
  • 国内債券:20%
  • 外国債券:10%
  • 外貨預金:10%
  • 円預金:10%

この資産配分を決めた根拠は何でしょうか?良い悪いではなくて、配分を決める方法が合理的である必要があります。私は過去の統計から、資産配分を決めています。同じ方法で若隠居さんの資産配分を試算してみると、リターン:3%、リスク:9%と計算されます。

確かに、平均3%の運用というご報告と符合するのですが……リターンが3%しかないのに、リスクがその3倍もあるというのは、効率的ではありません。

あるいは、リスクが高すぎると言ったらいいでしょうか。また、サブプライム・ショックが再来したら、資産は15%も減ってしまいそうだからです(2標準偏差:3-18=-15)。
 

リスクを最小化する資産配分

リターンが3%で十分であるならば、私でしたら過去の統計でシミュレーションして、以下のような資産配分を作ります。
 
  • 預金:5%
  • 国内株式:5%
  • 米国株式:5%
  • アジア株式:5%
  • 国内債券:17%
  • 先進国債券ヘッジ付き:57%
  • 新興国債券ヘッジ付き:6%

この資産配分で、予想されるパフォーマンスは、リターン:3%、リスク:3%。もう一度、リーマンショクのような悲劇に襲われても資産は3%程度の毀損で済むというわけです(2標準偏差:3-6=-3)。

若隠者さんの資産配分との違いは、海外の株式を限定的に取り込んでいる。海外債券については、為替リスクをヘッジすることでポートフォリオの中心に据えている。リターンのない国内債券、預金、外貨預金を極力減らしているという点です。ご参考にして、資産配分を再検討してはいかがでしょうか?
 

資産額別投資法のポイント:資産が違えば、配分が変わる

それから、5000万円と1億円で、投資手法が違うか?というご質問ですが、回答はYESです。ゴール(将来の目標金額)が同じで、投入する金額が異なれば、投資手法も異なります。目標リターンが変わってくるからです。たとえば、ゴールが今後40年間に毎月35万円を引き出しても赤字にならないことだとしたら、初期資金1億円の場合の必要リターンは約3%です。

しかし、初期資金が5000万円であれば、必要リターンは8%となります。リターンをあげるために、今の資産配分よりも、リスクを取らないとなりません。具体的には、株式の比率を上げる、為替リスクをヘッジしない、海外の比率を上げるなどの対策が必要です。

海外投資をするのだから、ドルで持たないといけない、ドルで評価しないといけないなんてことも、ありません。日本に暮らしているのですから、日本円で海外に投資していけばいいし、円価で評価してかまいません。

ただポイントは、外貨運用する商品(投資信託)の為替リスクをヘッジする(ローリスク)か、ヘッジしない(ハイリスク)かという選択で、そこは自分のニーズに合わせて、しっかりコントロールすべきです。

ブル・ベア型で短期的にリターンを獲得することは、マーケット環境が良ければ簡単に見えますが、長い人生を考えれば継続性や再現性に疑問を感じませんか?もし、そうであれば、トレードで暮らすというのは、なかなか大変なことです。
 

お金の基本は、労働と資本

仕事にはお金を稼ぐという目的以外にも、社会と交わる、他人に役に立つ、充足感を高めるなどの効用もあります。趣味に没頭できればいいのですが、仕事が無くなり暇が増えると、時間を持て余すとは、よく聞く話であります。お金の収支だけでなく、エネルギーの使い方として後悔しない道を選んでください。

それから、実物資産として金とプラチナをお持ちなのですね。それらは、利益も利子も生まないのに、盗難リスクをかかえています。金価格も、実は1980年代から2007年までは、鳴かず飛ばずの30年間でした。リスクが高まると安全資産として注目されるとは言われてはおりますが、いったいいつまで続くのでしょう。やはり、投資の基本は、株と債券と不動産だと思っています。資産とは、利益を生み出すモノだからです。

最後に、平凡ですが、老後の生活を支えてくれるのは、なんといっても公的年金です。年金機構のサイトにアクセスして、ご自身の支給見込み額を確認しておいてください。確実な年金額が分かれば、余計なリターンを求める必要がないので、より効率的な運用をできるはずです。

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