女性の司法書士はどれくらいいるの?
まずは、客観的なデータから確認していきます。■合格者数に占める女性の割合
平成26年度司法書士試験の最終合格者数の男女比は、以下のとおりです。
平成25年度以前の女性の割合は、以下のとおりです。
・平成25年度:26.1%
・平成24年度:21.6%
・平成23年度:23.7%
・平成22年度:25.8%
このように、ここ数年は大きな変動がありません。3割にも満たないので、まだまだ女性の割合は低いのが現状です。
■司法書士数に占める女性の割合
次は、司法書士数に占める割合をみていきましょう。
平成26年1月1日現在の司法書士数の男女比は、以下のとおりです。
合格者数に占める割合のほうが司法書士数に占める割合よりも高いので、合格者がそのまま司法書士になれば、これから司法書士数の女性の割合も高くなっていくでしょう。ただし、合格者数の女性比率自体がまだ3割に満たないので、司法書士数の女性比率が高くなるのは、かなり緩やかなものとなります。
司法書士試験よりも難易度の高い司法試験に合格してなることができる弁護士と比較してみますと、弁護士数の女性の割合は「18.1%」(平成26年3月31日現在。「弁護士白書2014」)です。弁護士と比べても、司法書士の「15.8%」は低い数字と言えるでしょう。
これらのデータからは、「他の職種に比べ、女性が活躍している」とはいい難いでしょう。
女性司法書士の仕事環境は?
「女性が働きやすいか?」という議論で、最もよく問題になるのが職場の環境です。司法書士試験合格後に多くの方が司法書士事務所に勤めることになりますが、ここでは司法書士事務所の勤務について、以下の3点から、職場の環境を見ていきます。・産休・育児休暇は取れるのか?
・託児所はあるのか?
・その他女性に配慮された職場となっているのか?
■産休・育児休暇は取れるのか?
産休・育児休暇
ただし、司法書士の就職という記事に記載しましたとおり、就職には非常に強い資格ですので、お子さんがある程度の年齢になった時に再就職することは容易です。ここは、一般企業にはあまりないメリットだと思います。一般企業では、「有名大学を出ていても出産で退職した場合、元の職種に戻れず、他の業種でしかも非正規雇用しかない」ということも往々にしてあります。
このように、「再就職が容易である」というメリットがありますので、産休制度や育児休暇制度がない点は、それほど心配する必要はないと思います。
■託児所はあるのか?
日本では託児所がある企業はあまりありませんが、司法書士事務所も例外ではありません。託児所がある事務所というのは私は聞いたことがなく、この記事を書くにあたって調べてみましたが、やはり見つかりませんでした。この業界では、一般企業以上に実現が難しい制度です。大企業であれば、オフィスに託児所を併設しても、常に一定数の利用者がいるでしょう。しかし、大企業に比べはるかに小規模な司法書士事務所では利用者がいるかどうかもわかりませんので、託児所まで作ることは今後もほとんど期待できないでしょう。
ただし、のちほどご説明しますが、司法書士の場合は「開業」という選択肢があります。自宅で開業し、子育てと両立することが可能ですので、一般企業への勤務と異なり、必ずしも子供を預けられる場所がないと困る、というわけではありません。
■その他女性に配慮された職場となっているのか?
産休・育児休暇や託児所以外にも、女性に配慮した職場なのかの要素は様々なものがあると思います。たとえば、「トイレが男女で分かれているか」という問題があります。小規模な事務所が多いので、分かれていないこともあります。女性に配慮した職場となるかは、事務所のトップが男性なのか女性なのかが大きいと思います。男性が女性の気持ちをすべて理解することは現実的には無理ですから(理解しようとしなくてよいという意味ではありません)、やはりトップが女性であるほうが女性に配慮された職場になるでしょう。例として挙げたトイレの件も、男性経営者ですぐに気づく人も少ないように思います。
ここまで、女性が働きやすい要素があまり多くは出てきていません。ではなぜ「女性が働きやすい」と言われるのでしょうか。
それは、「環境面」ではなく「評価の面」です。
女性も正当に評価される
女性の評価
たとえば、「女性であるからお茶くみやコピー取りの雑用をさせられる」ということはありません。司法書士業の場合、資格がなければできない仕事があり、事務所が資格者を雇う最大の意味がこの「資格がなければできない仕事をさせること」ですので、資格者として雇われたのならば、資格者しかできない責任のある仕事を任せられます。
また、女性の依頼者の場合、女性司法書士に相談したいという方は多くいますが、逆に男性の依頼者で、男性司法書士に相談したいという方はあまりいません。
結局「女性が働きやすい」とは?
前述しましたとおり、就職には非常に強い資格ですので、その点は大きなメリットです。出産などで司法書士業界から離れたとしても、再就職が容易です。出産でいったんは退職したが、数年後に再就職した方は多数います。さらに、開業する場合も、メリットがあります。司法書士の場合、自宅を事務所として開業することができます。私の周りにもいますが、自宅で開業し、お子さんが小さい間は子育てと両立できる範囲で仕事をするということが可能です。一般企業であれば、出社することが要求され、労働時間も企業の規定に合わせる必要があります。その点、開業する場合は調整がしやすくなります(ただし、自宅を事務所とした場合、自宅が知られるデメリットがある点にはご注意ください)。
今回の記事をまとめると、「司法書士は女性が働きやすい資格なのか?」という問いに対しての私の答えは、「環境面では働きやすいとは言えないが、評価(再就職や開業を含む)の面では平等である」です。