鈴木雅明(指揮) モーツァルト:レクイエム、他
世界が注目する鈴木雅明率いる古楽オーケストラ&合唱団、バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の注目新譜。BCJは2006年12月にモーツァルト生誕250年記念特別演奏会で同プログラムを披露しておりますが、2013年12月に7年の月日を経て満を持しての演奏会、そして録音となりました。今回のポイントはなんといっても鈴木雅明氏の子息にして、音楽のみにとどまらない幅広い活躍をしている鈴木優人が補筆校訂していること。新たなモツレクに出会うことができます。「奇しきラッパの響き」の異稿も収録致しました。
■ガイド大塚の感想
鈴木雅明氏がプロテスタントゆえ、演奏される機会の少ないカトリックのミサ曲『レクイエム』。森麻季らを迎えた2006年の祈りのような演奏に深く感動して以来の、個人的に待ちに待った録音。BCJの特徴である音の美しさが際立つ。名手揃いの管弦楽のシルクのような調べに、洗練を極めたソリストの歌、更にバランス良く楽器のように美しく響ききる合唱それぞれが解け合う様といったら……!
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飯森範親(指揮) オルフ:世俗カンタータ『カルミナ・ブラーナ』
日本を代表するソリストたちと声量豊かでパワー漲る東響コーラス、児童合唱の濁りのない純粋な音色。考え得る中でも最良の布陣を敷いて、飯森は東京交響楽団を見事にコントロールし、大編成の集団を豊かに響かせ、冒頭から終結まで強烈なエネルギーとスケールの大きさを失わせることがありません。巨大編成による壮大にして強烈な力感篭った一大スペクタクル。一音たりとも聴き逃す隙を与えない生命感漲る名演奏です。
■ガイド大塚の感想
飯森範親と2004年から正指揮者を務める東京交響楽団のコンビ。さすがによく知り合った仲というか、迫力も申し分なくオーケストラが鳴っている。だが、バーバリズムというわけではなく、現代的視点できちんと捉えていて、荒れることなく細かなフレーズも理知的に響くあたりが聴いていて新鮮に感じられる。
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ジャルスキー(カウンターテナー) グリーン~フランス歌曲集第2集
世界一美しい声の持ち主、そしてカウンターテナー界の貴公子、フィリップ・ジャルスキーのフランスの歌曲集の第2集。19世紀フランスの代表的詩人、ヴェルレーヌの詩に附曲された幅広いジャンルの作曲家による作品を収録したアルバム。近現代のクラシックからシャンソン界までの幅広い作曲家の作品が収録され、ジャルスキーの美しい歌唱から、たくさんのちりばめられた色を感じることができるはずです。カウンターテナーは、バロックだけではありません! こちらはヴェルレーヌ詩の内容が重要なので、日本語対訳付の国内盤をお薦め致します。
■ガイド大塚の感想
「秋の日のヴィオロンのためいきの」で知られる『秋の歌』などヴェルレーヌの詩を用いた歌を歌うが、ドビュッシーからシャンソンまで本当に幅広い。また、美少年を愛したヴェルレーヌだけに、カウンターテナーがそれを歌うというのが面白い。ジャルスキーは気品を保ちつつもデカダンスを感じさせる。ジャケット写真はヴェルレーヌが通ったカフェ「プロコップ」で撮影され、また彼が愛したアブサンのグラスが映っているなど、細かなところにまでこだわりきった1枚。
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冨田勲(シンセサイザー) 『スペース・ファンタジー』
「PLANETS」の世界的成功で勢いに乗る世界のTOMITAによる、1978年の「宇宙幻想(英題COSMOS)」、「バミューダ・トライアングル」「火の鳥」の中から厳選されたトラックを、4chサラウンド化して収録。さらには未発表音源「魔法使いの弟子」「くるみ割り人形」「ベートーヴェン:田園」をなんと世界初収録! 冨田自身が「最もシンセサイザーを自在に使いこなしていた時期」と語る80年代中期に制作されたこの音源は、まさにTOMITAファン驚倒の秘蔵音源。
■ガイド大塚の感想
クラシックの楽曲をシンセサイザーでアレンジし世界的評価を得ていた冨田勲。今聴いてもつくづく面白い。「魔法使いの弟子」はビートのはっきりある曲なのでテクノな感じ。『くるみ割り人形』も湧き出るアイデアに驚き、聴き入ってしまう。
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シュナイダーハン(ヴァイオリン) ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲、他
フルトヴェングラー、アンセルメといった20世紀の大指揮者と共演したヴァイオリン協奏曲が2曲をカップリング。ベートーヴェンは有名な1953年ティタニア・パラストでのライヴ録音で、これまで何度も再発売されてきた名盤です。今回、アナログマスターから新規でCDマスター音源を制作しました。音質面でも興味深い復刻です。
■ガイド大塚の感想
熱いフルトヴェングラーとの名演におけるシュナイダーハンの美しく高貴な魅力は、色褪せるどころか更にその存在が際立つようにすら感じる。アンセルメと録音したマルタンのヴァイオリン協奏曲はこれが世界初録音だったとのこと。初演からわずか3年後の1955年の録音だが、こちらも確固たる演奏の中にロマン派の残り香を加えている。それにしても、スイス・ロマンド管の機動力抜群な上手さも再確認。
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リヒテル(ピアノ) 『幻のカーネギー・ホール・ライヴ1960第1夜 ベートーヴェン:熱情&葬送』
今年生誕100年を迎える20世紀ロシアの名ピアニスト、スヴャトスラフ・リヒテルが1960年に行なったアメリカ・デビュー・ツアーは、それまで鉄のカーテンのヴェールに包まれていたリヒテルの存在を大きくクローズアップしました。中でもカーネギー・ホールでの連続ソロ・リサイタルは、リヒテルの途方もなく幅広いレパートリーとスケール雄大なピアニズムを強く印象付けました。その初日に取り上げたベートーヴェンのソナタ5曲は、45歳という脂の乗り切った超絶技巧をヴィヴィッドに記録し、凄まじい気迫が伝わってくる貴重な録音です。
■ガイド大塚の感想
リヒテルの凄まじさを今に伝える記録。『熱情』における信じられない爆速の怒涛の演奏など、今でも衝撃だが、当時、生で聴いた客の驚きは半端ではなかっただろう。1、3楽章だけでなく、2楽章まで速いのは本当にショックに近い。語り続けられてきた伝説の一夜の生々しさが体感できる。
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シュナイダーハン(ヴァイオリン) J.S.バッハ:結婚カンタータ、他
シュナイダーハンの妻で、ウィーン国立歌劇場の花形ソプラノだったゼーフリートとの共演盤を世界で初めて完全復刻。録音は1959年で、彼と弟子のバウムガルトナーが組織したルツェルン音楽祭弦楽合奏団のバックです。余白には、LPでは未発売に終わり、2008年に海外盤CDで初発売された1957年録音のドビュッシーを収録。
■ガイド大塚の感想
『結婚カンタータ』はソプラノの独唱のカンタータだが、第5曲のアリア「春風吹き渡るとき」ではヴァイオリンの伴奏と絡む。夫婦の共に美声、美音の、どこか落ち着いた愛のあるデュエット。
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ということで、交響曲から室内楽、合唱から再発ものまで注目の新譜を紹介しました。気になったものを聴いていただけたら幸いです。