うんちの絵本にたくさんの人が涙する
自分は誰からも必要とされず、何の役にも立たない存在と思っていたこいぬのうんち。そのうんちが、たんぽぽとの出会いによって変わっていきます。次第に高まっていくうんちの自尊感情と幸福感が読む者の涙を誘います。そんな汚いけれど尊い働きをする「こいぬのうんち」のお話をご紹介しましょう。うんちのイメージをくつがえす絵本『こいぬのうんち』
トリという名の男の子の飼い犬・しろが、うんちをしました。しろはまだ小さな子犬なので、子犬のうんちというわけです。生まれたばかりのうんちは、スズメや土くれから「汚いうんち」と罵声を浴びせられ、自分がうんちという汚い存在であることを知ります。悲嘆にくれるうんちの様子に、土くれが身の上話を始めますが、その土くれもやがて持ち主のおじさんが畑へと連れ帰ってしまいました。うんちは独りぼっちになり、その悲しみは増すばかり。「僕はなぜ生まれてきたんだ? 僕は役立たずの嫌われ者なのか?」とうんちの悩みは尽きることがありません。
自己肯定感を持てず孤独なうんちの心情は、まるで思春期の子どもたちのようでもあります。もがいても、もがいても、抜け出せない迷路の中にいるような閉塞感が絵本の前半部を覆っています。
たんぽぽとの出会いが、うんちの心に喜びをもたらすことに……
やがて、雨に打たれドロドロになって土へ還っていくうんち。彼の身は、そしてその想いは、たんぽぽの根っこに集まり茎を昇っていきました。暖かな春の日に、こいぬのうんちの想いが詰まったたんぽぽは、星のように輝く可憐な花を咲かせます。
重苦しい前半部から180度かわって、どんなものにも存在価値があることや、命は巡ることなどを教えてくれる後半部分。そこには、切なさを残しながらも温かく幸せな空気が流れます。最初はタイトルを聞いてケラケラ笑うだけの子どもたちも、次第にこいぬのうんちに心を寄せていく……そんな様子が見られることが、読み手には何より嬉しく感じられるでしょう。
【書籍DATA】
クォン・ジョンセン:文 チョン・スンガク:絵 ピョン・キジャ:訳
価格:1620円
出版社:平凡社
推奨年齢:4歳くらいから
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