NEXT WORLD
2015年2月8日の第5回が最終回となったNHKスペシャル『NEXT WORLD~私たちの未来』をご覧になられたでしょうか? 手塚治虫先生が描いたような近未来世界に30年後にはなっているのでしょうか? 意識したのか分かりませんが、手塚先生の『来るべき世界』の副題は、「NEXTWORLD」でした。NEXTWORLD1 (amazon.co.jp)
Nextworld Volume 1(英語版)
NEXT WORLD~私たちの未来 (NHK)
番組の中でも特に興味を惹かれたのが、第1回の放送に収録された人工知能がヒットを予測したNYC在住のHeidi Merrillさんの話。ヒット曲予測開発会社として紹介されていたMusic Xrayについて、さらに調べてみました。
Music Xray
Music Xrayの考えでは“ヒット曲予測”というのは手段であり、目的はマッチングにあるとしています。そのうえで「ミュージシャンは契約、ファンを得て、さらなる改善ができる」「音楽業界(特にA&R)は、高い可能性のある又は機会に相応しい音楽と才能を発掘できる」「ファンは、趣向にあった音楽とタレントを発見できる」といったビジネスモデルが実現できると提唱しています。肝心のヒット曲予測システムについては、Polyphonic HMIが研究したヒットソング・サイエンスをベースとしており、「約300万曲のデータベースを元に70の要素を分析し、60のヒット曲クラスタを導き出す」というものになっています。加えて、それぞれの楽曲に対して「composition」「production」「arrangement」「performance」 というラベリングも実施。最終的に「ヒット曲予測」をクラスタにもとづいて算出するのです。
「The New Yorker」誌によると、Music Xrayのヒット曲予測的中率は80%。かなり高いのでその基準が知りたいのですが、残念ながら詳細は不明です。また、分析にもとづいて楽曲の改善提案をしたり、業界から依頼のあった特性をもった楽曲(※)を探してくれます。
※例えば、「◯◯◯みたいな感じの曲をCMに(安く)使いたい」という要望なのかと推測します。
なお、2008年のSony Computer Science Laboratoriesの研究発表によると、アルゴリズムを使ったヒット曲予測は人間のランダムな推測を超えないと反証されています。
Music Xray
で、ヒットしたのか?
番組の内容からは、Heidi MerrillさんがMusic Xrayによってヒットシンガーになったかのような印象を受けますが、正確には無名のシンガーからプロデビューのきっかけをつかんだ、と言うべきでしょう。別にビルボードチャートに入ったわけではありませんし、YouTubeの視聴数も現状で4桁で、別の動画が注目されている形跡もありません。この手の曲は僕のアンテナに入らないというのもありますが、どうしてこれがヒット曲と予測されたのか感覚的には理解できません(でも、多くのヒット曲はその範疇なんで、あくまでも個人的意見)。アメリカのNBCの番組に出演したのは功績でしょうが、現状ではヒットしたと言い難いです。曲のタイトルのようにフェード(アウト)しなければ、いいのですが。
Heidi Merrill - "Faded" Official Music Video (YouTube)