絵本

せなけいこさんが描く憎しみの連鎖『いじわる』

「いじわるーいきもちって どんどんうつるんだよ」。人間関係のこじれも争いも、どんどんひどくしてしまうのは憎しみの連鎖だということを、ユーモアたっぷりにわかりやすく伝えてくれるせなけいこさんの絵本『いじわる』をご紹介します。

執筆者:千葉 美奈子

いじわるはうつるんだよ!
せなけいこさんが描く憎しみの連鎖『いじわる』

小さな男の子「たあぼう」が一生懸命に作った雪だるま。自分よりも大きな雪だるまなので大変だったでしょうし、思い入れも相当強かったのでしょう。突然おひさまに向かってこんな言葉を投げつけました。
「おひさまあっちいけ。ぼくのゆきだるまをとかすな。いーっ」。
売られたけんかをストレートに買ってしまったおひさま。たあぼうの雪だるまをすっかり溶かしてしまいました。

大泣きのたあぼう。雪だるまの目や鼻に使っていた炭のかたまりをお日様に投げつけたら、お日様はひらりと逃げて、雲さんにぶつかり、怒った雲さんが大雨を降らします。慌てて岩穴にかけこんだたあぼうは恐竜さんの足を踏んでしまい、恐竜さんが怒って……。怒りと誤解が絡み合って連鎖し、泥沼化していきます。



仕返しはよくないと言うけれど……

世の中には、「仕返しをしたら同等になっちゃうからしないのが一番」では済まない感情がたくさんあるのが現実です。じゃあ、冷静になって話せばお互い理解しあえるのかと言えば、そうではない場面もたくさん。そもそも、対話を持つ土壌がない相手と相対してしまうこともあります。

仕返しに当たってしまう行為が、その後どのような展開につながるかもケースバイケース。どうすればいのでしょう。

子どもたちからこんな声が聞こえてきそうです。
「いやなことをされても我慢しなきゃいけないの?」
「いやなことわれていやな気持になるのは当たり前だよね」
「相手が悪くても、黙っていなきゃいけないの?」

そうではないはずです。決まった答えはないかもしれないけれど、相手に同じような思いを体験させて理解させることだけが方法ではないし、もっとほかにその時にできることがあるはず。あっけらかんとしたトーンのせなけいこさんの絵本が、平和の根っこについても問いかけてくるようです。


ユーモアに満ちた世界を楽しみながら

「何気ない言葉が相手を傷つけてしまうこともあるんだよ」「誤解されてしまった相手に、どんな気持ちの伝え方があるだろうか」……。子どもたちは成長するにつれて、他者との様々な衝突を経験するでしょう。ユーモアたっぷりのせなけいこワールドを楽しみながら、段々複雑になってくる人間関係に悩むことも出てきたお子さんと、そんなことについて考えてみてはいかがでしょうか。

人間は傷つけ合う存在。自分と相手のとらえ方の違いや、時間が解決できることとできないことなどについて体験談を紹介した、カバー裏のせなけいこさんのメッセージがまた深いですよ。
 
【編集部おすすめの購入サイト】
楽天市場で絵本を見るAmazon で絵本を見る
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます