実際に住んでいる人が狭小住宅を評価
発表したのは、積水化学工業住宅カンパニー(セキスイハイム)の調査研究機関である住環境研究所。内容は「小規模戸建住宅のプラン実態調査」です。これは、延べ床面積110平方メートル未満の2階建て戸建住宅(小規模住宅)に住んでいる人を対象にしたもの。有効回答数など細かい情報については、こちら(PDF)をご覧ください。
それによると、小規模戸建住宅の間取りの満足度は、住んでいるプランが「1階LDK+和室、2階浴室」では「非常に満足」が29%と最も高く、最も低いプランが「1階LDK+和室+浴室」(13%)となっていました。
さらに「現在の家族と暮らすとするとどのタイプ?」という設問についても、「1階LDK+和室+浴室」に住んでいる人の場合、そのタイプのままという人が3%なのに対し、「1階LDK+和室、2階浴室」にしたいという人が31%となっていました。
浴室のみを取り出すと設置場所が1階の人で「2階にしたい」と感じている人の割合が48%にのぼるのに対し、2階に浴室がある人のうち「1階にしたい」とする割合は2%にとどまっていたのが、何よりの特徴です。
これって面白いと思いませんか。実際に狭小住宅にお住まいの方が、「2階に浴室がある方が良かった」と考えているわけです。私も色々な新築住宅を見てきましたが、そのほとんどは1階に浴室があるプランでした。
実際、この調査でも「1階LDK+和室+浴室」のプランが好まれる傾向にあり、採用は54%。2階浴室の採用は「1階に和室あり」で3%、「1階に和室なし」で2%に過ぎなかったといいます。
1階の収納の充実と洗濯動線が理由に
これについては、「新築時には家事動線を優先するため」と指摘しています。家事動線を優先するというのは、1階に浴室があることでキッチンでの食事の用意や子育てなどがしやすいということなのだと考えられます。これは、私などにとっては既成概念の様な感じで「良いプラン」と思っていたことでした。しかし、実際に居住している方々の評価は、「2階に浴室のあるプランの方が良かった」となったわけです。
で、2階浴室プランに対する評価としては、次の2点で優れているとのコメントがあったそうです。
・(1階に)まとめ買いが安心の大型パントリー(収納庫)を設置できる
・洗う→干す→しまうが2階で完結する洗濯動線
このため、2階浴室プランの魅力は「1階の収納量の充実」、「効率の良い洗濯動線」の2点であるとまとめています。要するに、この2点を考慮すると、狭小住宅であっても満足度が高い住まいになる可能性が高まるというわけです。
確かに、1階に大型収納があると、まとめ買いをして帰ってきてもすぐに収納できるから便利。今は、大型スーパーなどでまとめ買いをする時代ですからなおさらです。
また、洗濯物をしまうまでの行為が階段の上り下りがない短い動線で行えれば、これも便利。このようなことが、生活者の本当の悩み、困りごとなのだということが、この調査で浮き彫りになっているのです。
ちなみに、インタビュー調査により、高齢者が暮らす小規模戸建住宅でも、「住み替え」を前提とし「2階浴室プラン」を選択するというケースが見られたそうです。
さて、ではなぜ、1階浴室プランの方が一般的で2階浴室プランの方が相対的に少ないのでしょうか。次のページでその要因をいくつかあげてみます。