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又吉直樹「火花」は文学の枠を越えた文学だ(2ページ目)

「ピースの又吉直樹、純文学デビュー!!」の話題は、お笑い界久々(?)の明るい話題でした。単行本の刊行はもう少し先のようなので、本格レビューはその時まで取っておいて、いち早く感想めいたことを書かせていただきました。

広川 峯啓

執筆者:広川 峯啓

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今回は断片的な感想ですが

と、ここまで書いたところで「だったら、お前が早く評論しろよ」という声が、背中にグサグサ突き刺さってきました(笑)。もちろんそうしたい思いは十二分にあるのですが、どうせ書くのであれば、下準備もおこたりなく行い、いくつもの参考資料を読み込んだ上で取り掛かりたいですから……。

というわけで、今回は断片的な感想というか、評論のかけらみたいなものをいくつか記すにとどめておきます。おそらく単行本の出版も決まっていることでしょうから、そのタイミングに合わせて、自分なりの「火花」論を完成させたいと思っています。


思いついたことをアトランダムに

漫才師を主人公にした小説自体は、芸人自身が書いたもの、プロの作家が書いたもの含め、少なくはないものの、その大部分はコンビ同士の友情や対立を描いたものでした。一方「火花」は、2組の漫才のボケ役2名が師弟となって会話します。この設定がなかなか面白かった。

というのも、ここ最近の漫才は、コンビのどちらかがネタを書き、それを相方がひたすら覚えるというシステムが確立してます。そうなるとネタを書かない方は、優秀なイエスマンとなることこそが、完璧な漫才に近づく道であり、2人でお笑い論を戦わせることは、かなり不自然になってしまうわけで、そこを考えた上での人物設定なのでしょう。

さらに唸らされたのが、主人公の徳永と、師匠の神谷のお笑い感の違いです。論理を積み重ねて笑いを追究していく徳永に対して、感性の鋭い神谷は直感的に結論を見出します。この資質の違いが会話を弾ませることになり、時には対立することにもなってしまいます。

あと、これまでほとんどの芸人が、できるだけ深く考えないようにしてきた「観客」についても、独自の捉え方が見受けられ、驚くと同時に感心させられました。


まだまだ取り上げたい箇所はあるものの、それはまたいずれ。小説好きな方はもちろんですが、お笑い好きが「火花」を読めば、必ず何か発見がある筈です。雑誌「文学界」でも、単行本になってからでも、ぜひ一読をお勧めします。
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