女たちの復讐譚
『告白』(2010年度作品)
中学校の終業式で、あるクラスの担任教師の森口(松たか子)は、プールで事故死した自分の娘は殺されたのだと告白する。そして犯人もわかっていると。そのときから森口の復讐は始まったのです。
教室で生徒を前に無表情で延々と娘の殺しについて語り始める森口、復讐はすでに始まっており、犯人の生徒はそれぞれこれまでとは違う行動に出るように……。刃物を振りかざすのではなく、言葉で相手を追い詰めて、復讐を果たす女教師が怖い。とまどう生徒たちも好演で、この映画を見ると、やはり子供の純粋と邪悪さは紙一重だなと思いますね。森口が犯人を追いつめるラストシーンの衝撃は突出。中島監督の美しくも情け容赦ない演出が冴えわたります。
監督:中島哲也 出演:松たか子、木村佳乃、岡田将生ほか
『ゆりかごを揺らす手』(1991年度作品)
産婦人科医にセクハラをされて訴えた主婦のクレア(アナベラ・シオラ)。彼女の訴えが医師を追いつめ、彼は自殺。医師の妻ペートン(レベッカ・デモーネイ)はショックのあまり流産してしまう。すべてを失ったペートンはクレアに憎悪をたぎらせ、クレア宅のベビーシッターになり復讐をする……。
復讐鬼を自宅に入れて赤ちゃんを預けてしまうだけで恐怖倍増。狂気にかられた女はクレアの赤ちゃんに自分の乳を飲ませたり、夫が浮気しているように画策したり、自分を疑う人物を家から追い出したり……クレア一家を崩壊させようと暴走していきます。こんな女に追いかけられて、クレアはどうするのかと思ったら、崖っぷちで大逆転! 女の怖さ、陰湿さに背筋が凍る復讐サスペンスの快作です。
監督:カーティス・ハンソン 出演:アナベラ・シオラ、レベッカ・デモーネイ、マット・マッコイ、アーニー・ハドソン、ジュリアン・ムーア
『キル・ビル』(2003年度作品)
結婚式の日に、かつてのボスに夫も愛もすべてを奪われた花嫁(ユマ・サーマン)が復讐をするバイオレンスアクション。Vol.1、Vol.2とありますが、Vol.1は日本ロケを敢行し、日本人役者も多く出演して話題になりました。
とにかく復讐に燃えるオンナは強く美しいというのを証明したのがユマ・サーマン。愛する人を失い、孤独を身にまといながら、闘いの旅に出る。彼女にとって復讐することは愛を貫くこと。また復讐によって命を落としても、失う物が何もない彼女は痛くもかゆくもないのです。だからこそひたすら前進できるのですね。その一途な愛と憎しみの感情がたまりません! 人生が復讐になってしまった女の悲しみと情熱がしっかり描かれています。
監督:クエンティン・タランティーノ 出演:ユマ・サーマン、デヴィッド・キャラダイン、ダリル・ハンナ、ルーシー・リュー、千葉真一、栗山千明ほか
※復讐映画はおもしろい作品が多いですね。また男と女ではおもしろさも違います。同じ復讐でも女性の方が陰湿で嫉妬深く、男性は力を武器に悪を倒す的なニュアンスも。また特集したいと思います。