PTSD・心的外傷後ストレス障害とは……震災・事故・暴力などが原因に
虐待や地震などの自然災害といった強烈な体験がPTSDを起こします
震災・台風・噴火などの自然災害、火事、事故、暴力、犯罪被害などの強烈な体験によるショックや強い精神的ストレスが心にダメージとして残ってしまい、時間がたっても、その体験・経験に対して強い恐怖を感じることをPTSD(外傷後ストレス障害)と言います。
強烈な体験によるショックや、強い精神的ストレスに対して恐怖したことが、一時的でなく継続・反復することです。このPTSDは、誰でも起こるわけではないのですが、誰にでも起こりうるとも言えます。つまり、PTSDは、心の弱い人がなるわけでなく、心の強い人もなりますので、その機序については不明なことが多いです。心の傷(トラウマ)には個人差がありますし、その傷の感じ方にも個人差があります。自分を責める必要はありません。
<目次>
大人のPTSDの症状……フラッシュバックや睡眠障害など
大人のPTSDの主な症状として、下記が挙げられます。■突然、つらい記憶がよみがえる
記憶がよみがえることで、その時に恐怖、苦痛、怒り、悲しみ、無力感などのいろんな感情が混じってきます。そのため、感情が不安定になります。同じ悪夢を繰り返して見ます。こうしたことがすっかり忘れたつもりでいても、ふとした時に出てくることがあります。周りから見ると、突然感情が不安定になったり、感情の起伏が見られるので、理解されないことがあります。
■常に神経が張りつめている
緊張が続き、イライラや警戒心が強く、感情的に敏感になって、睡眠不足などの症状が起こります。
■記憶を呼び起こす状況や場面を避ける
本人も意識しないままであったり、本人でしか判らない、ちょっとしたきっかけで何度も記憶を呼び起こすことになります。その場合、自分で気づかないうちに記憶を呼び起こす状況や場面をさけるようになります。その結果、行動が制限されてしまいます。
■感覚が麻痺する
つらい記憶に苦しむことを避ける防衛反応で、感情や感覚が麻痺してしまいます。ある意味、他人が見れば、冷たい印象を与え、急に性格が変わったようにみられるかもしれません。人に心を許さなくなったりすることがあります。
■いつまでも症状が続く
辛い体験や経験の後は徐々に自然に症状が消えていくことが多いのですが、1カ月以上も症状が続いたり、悪化傾向があれば、PTSDと考えられます。
子どもの場合は、年齢によってその症状が異なります。
子どものPTSDの症状……乳幼児・学童など年齢による違いも
小さい子どもでは、保護者や周りの人が気づいてあげる必要があります。子どものラウマ体験は、突然の予期せぬできごととして、想像以上に強い恐怖の感情や不安を引き起こしますことになります。そして症状を訴えることが少ないために、周りで気づいてあげる必要があります。放置しておくと、子どもの発達にも影響を受けることになります。そこで、子どものサインを年齢別に、Monahan先生が1995年に報告された症状を元にまとめてみました。このようなSOSのサインに注意しましょう■2歳6カ月まで
- 夜中に目が覚める
- 大きな音、聞き慣れない音に対して驚く
- トラウマを思い出させるような状況を避けたり、驚いたり、叫んだりする
- トイレのしつけがうまくいかない
- ぐずる、泣きわめく、強情になる、わがままになる
- 離れることに対して不安を感じている
- 身体を硬直させる
- 今まで話せていた言葉が出なくなったり、できていた運動ができなくなる
- 引きこもり
■2歳6ヵ月から6歳まで
- 出来事を繰り返し話題にする
- 外傷のイメージを強烈に思い出してしまう
- 今までできていたことができない退行という現象を起こす
- 離れることに対して不安を感じている
- 悪夢や夜に起きだしたり、泣いたりする睡眠障害がある
- 不安や恐怖を表現するようになる
- 引きこもり
- 無口
- 集中力が低下する
- 外傷体験を再現する遊びをする
- 活動への関心の低下する
- 出来事の混乱した形で理解している
- 物事を魔術的な解釈をする
■6歳から11歳
- 外傷的な出来事を繰り返し語る
- 不安や恐怖を明らかに表す
- 具体的な物に対する恐怖をもつ
- 出来事を再現する
- 同じことが起きるのではないかと不安になる
- 今までできていたことができない退行という現象を起こす
- 外傷のイメージを思い出してしまう
- 集中力が低下する
- 攻撃的な態度をとる
- 興味がなくなる
- 睡眠障害
- 引きこもり
- 自分に罪があって、罰を受けると思ってしまうと感じる
- 行動、気分、性格の変化
- 失禁など、トイレの失敗するようになる
- 親の反応に対して過敏になる
■11歳から18歳
この時期には思春期ですので、大人への移行時期もあり複雑です
- 外傷の再現し、逸脱した行動を起こす
- 恥、罪責感、低い自己評価から距離をおく
- 活動性が高くなる
- ひきこもり、心を閉ざす
- 事故を多発する
- 睡眠や摂食障害
- 外傷イメージの思い出す
- 人間関係の持ち方に変化がでる
- 大人になり急ぐ
- 家庭へのひきこもり
子どものPTSDの治療法・対処法……薬物療法も選択肢だが日常レベルでの関わり方も重要
親子の時間を増やしたい
まずは、子どもの成長を考えると、薬物ではなく、日常レベルでの関わり方が必要になってきます。
1998年の井出先生によると
- 子どもたちにかかわる時間を増やす
- 子どもたちが語ることはしっかりと耳を傾ける
- 子どもたちが感情を表現する機会を与え、感情をしっかりと受け止める
- 子どもらしい活動、遊びを保障する
- ストレスへの反応を教えること
治療については、保護者に負担がかかっている場合もありますので、周りの人の協力も必要になります。まずは、面接で原因を特定できるかどうか、そして、その原因に対して対策がとれるかどうかです。また、PTSDの原因が虐待であるケースもあります。虐待が疑われる場合は、子どもと保護者をわけ、別に面接する必要があります。
心の問題は外傷と違って外から見えにくいために、外傷は治っても心の傷は残っていることがあります。そのサインにまずは気づくことから治療が始まります。気づいてあげるためにも、子どもの様子を観察するために関わる時間を増やし、子どもの語ることに耳を傾ける必要があるのです。大人でもそうですが、語ることで出来事を整理することができ、自分の中で解決することができます。
なかなか難しいのですが、何よりもストレスへの対応を学んでいくことが重要です。時間がかかるかもしれませんが、焦らず、少しずつ心の傷を癒していきましょう。
症状がなかなか改善しない場合に、生活改善などを目的に、薬物療法を行うことがあります。抗不安薬や睡眠導入薬などが使用されますが、PTSDに対して使用する薬剤ではなく、あくまでPTSDによる症状に対する治療になってきます。行動療法を含めた心理療法を中心に進めていきましょう。
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