介護

生活に満足している人ほど要介護状態になりにくい?(2ページ目)

介護予防は高齢者にのみ課された問題ではなく、若い世代から関心を持って取り組んでいく「ゼロ次予防」が大切です。介護予防でも「三つ子の魂、百まで」。今回は、ゼロ次予防を考えていく上で重要なキーワードとなる「主観的幸福感」について考えます。

執筆者:中山 奈保子

「内的・外的統制感」とは?

「自分の力で物事を動かせる」というエネルギーを持っていたい

「自分の力で物事を動かせる」というエネルギーを持っていたい

内的・外的統制感(ローカス・オブ・コントロール)とは、暮らしのなかにおいて「物事を決定づける力」の所在や価値観の傾向を指します。

例えば禁煙を例に挙げると、「タバコをやめられるかどうかは医者の腕や運次第」と考える傾向が強い場合は外的統制感が強い傾向にあると言えます。一方、内的統制感が強い場合では、「タバコをやめられるかどうかは自分の意志と行動次第」と、自らの努力に価値を置きます。

一般的に、健康を維持していく上では内的統制感が優勢であることが好ましいとされており、介護予防の分野でも同様に考えられています。

介護予防でも「三つ子の魂、百まで」

ストレス対処能力や内的・外的統制感を例に見てみると、高齢者の主観的幸福感は、単に老後の生活環境や健康状態で決まるのではないことがわかります。もちろん、高齢になっても自らの性格や価値観を変化させていくことも可能ではありますが、若い時ほど柔軟に対処できないのが実状です。

例えば、長年仕事ばかりをこなし、休日は一人で過ごすことを好んできた人が、退職して急にご近所付き合いを始めることはなかなか難しいことですし、常に他人任せで生きてきた人が、何事も自分の力でと考えるには相当な努力やきっかけを要します。

本来、性格や価値観は、幼少期・思春期における生育環境や成人期に得られる様々な人生経験の中で学習され、培われていくものです。例えば、幼少期に親に良く褒められて育った子は成人期以降の内的統制感が強い傾向にあり、叱られてばかり育った子は、外的統制感が高くとなるという調査報告もあります。

介護予防にとって重要な要素となる主観的幸福感は、幼い頃からの積み重ねによって得られるといっても過言ではないでしょう。介護予防は、高齢になってはじめて取り組むものではなく、世代を越えて共有すべき課題なのです。

次回は、ゼロ次予防に欠かせないもう一つの側面「運動能力」について取り上げます。

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