小さくて着られない『サナのあかいセーター』の大変身
冬のある日、おばあちゃんの手編みのセーターがサナに届きました。でも、きっとなかなか普段は会うことができない距離なのかもしれません。おばあちゃんはサナの体の大きさをしっかり把握していなかったようで、袖も丈も短くてきついのです。そんな「サナのあかいセーター」が、サナが友だちの男の子や動物たちと一緒にあれこれ考え、紆余曲折をへて、ちょうどいい大きさのとびきり温かいセーターに生まれ変わります。そこに至るまでの、笑いと優しさに満ちたドラマ。読み進むにつれて、そして読み終わった後に、何ともいえない温かい空気に包まれるでしょう。
やることなすこと裏目に出る!?
セーターが小さければ大きくするためにみんなであちこちの方向に引っ張る、伸びすぎてしまったら縮ませるためにみんなでごしごしざぶざぶ水洗いする……。ものすごく単純な行動に見えますが、サナも友達みんなも、ちょうどよい大きさのセーターにしようと知恵を出し合い、力を合わせています。でも、やることなすこと裏目に出て、しまいには行き過ぎて、セーターが原形をとどめなくなってしまいました。最後の頼みの綱はやっぱりおばあちゃん! みんなはおばあちゃんのもとに向かいます。温かい赤い毛糸のかたまりに包まれて。おばあちゃんの笑顔を見たサナの目に、思わず涙が浮かびます。みんなの愛の詰まった極上のセーター
手編みならではの温かさ
セーターをちょうどよい大きさにするために、どうしたらいいか一緒に考えてくれた友だちの思い、みんなが時間をかけて関わってくれた作業、それらは直接の解決策にはなりませんでしたし、随分回り道をしてしまいました。でも、おばあちゃんによって生まれ変わったセーターの中に、みんなの思いがしっかり編み込まれました。
幼児期の子どもたちには、ハラハラするお話の展開も楽しいでしょう。もう少し大きい子には、周りの人とのつながりも絡んだ、物への愛着というものを感じさせてくれそうです。「物を大切にすること」と書くとどうしても教訓じみてしまいますが、もっと自然で色々な角度からの愛着が表現されているように感じます。そして大人は、物や命の限りある寿命を思って少しほろりとしてしまうかも。やはり冬にぜひ読んでいただきたい、温もりに満ちています。