切手収集/切手収集入門

有馬温泉にある切手文化博物館(4ページ目)

神戸の中心部から電車に揺られて約30分のところにある有馬温泉。ここには昔ながらの商家をイメージした切手と郵便に関する博物館があります。その名も有馬切手文化博物館。全国的にも数少ない切手専門の博物館の楽しみ方を詳しくお伝えします!

板橋 祐己

執筆者:板橋 祐己

切手収集ガイド

空前絶後の手彫切手コレクションを形成

金井宏之さんの業績の中でひときわ異彩を放つのは、日本の郵便創業期の手彫切手コレクションを築いたことでしょう。金井さんが手彫切手の世界にのめりこんだのは、1949年に伏見宮博恭王(海軍軍人・皇族)が築いた筋の良いコレクションを入手したのがきっかけでした。ちょうど戦後、旧宮家から貴重な書画骨董が市場に流入していた時期の出来事のことです。

その後、日本切手収集家フランク・J・ペプロウが築いた116シートの手彫切手のシートコレクションをアメリカで撮影し、『ペプロウ日本手彫切手シート・コレクション写真集』(1971年)として刊行。1970年にはペプロウ旧蔵のシートコレクションの里帰り(逆輸入)を実現させるなど、精力的な手彫切手の収集を展開し、空前絶後と言われる手彫切手コレクションを形成しました。
ペプロウ

(参考)ペプロウが1910年に刊行した写真帳の復刻。

金井さんの収集品は有馬切手文化博物館で、毎年5月中旬に期間限定公開を行っていましたが、2014年にその主要部分を『日本手彫切手 金井宏之コレクション』(一般財団法人切手文化博物館、2014年)として刊行しました。
日本手彫切手

3冊組で刊行された『日本手彫切手』(切手文化博物館、定価60,000円)。

金井宏之初代館長との思い出

私事ながら、私自身、初めて切手文化博物館を訪れたのは、2010年のゴールデンウィークのことでした。博物館に入ると、駐車場には黒塗りのハイヤーが駐車していました。「ひょっとしたら金井さんに会えるかも?!」と淡い期待を込めながら入館すると、奥のほうには金井さんの姿が!!私が話しかけると、気さくに博物館のエントランス横の椅子をすすめてくれました。
切手文化博物館の入り口の様子

金井宏之さんと筆者がしばらく歓談したエントランス付近。ここからは、スリッパに履き替える。

5月16日生まれ

金井さんからはしばらく手彫切手の話題を伺っていましたが、その後実は金井さん(大正14年)も私(昭和53年)も、同じ5月16日生まれ同士ということが分かり、「2人で一緒に5月16日の郵便や消印を集めよう!」という話になりました。5月16日の消印を見つける可能性は、単純計算すれば365分の1ですが、5月16日が日曜に当たる年は1000分の1以下の可能性になるとか、そんな話題で盛り上がりました。まだまだ伺いたいことはたくさんあったのですが、あっという間に小一時間ほどの時間が過ぎ去り、「ぜひまたお会いましょう」と言って別れました。
5月16日の消印

筆者が生まれた昭和53年5月16日の消印。

その後、残念ながら金井さんは2012年1月に死去。ついに誕生日をテーマに一緒に集めていこうという話は果たせない約束となりましたが、それだけに金井さんとのつかの間の交流は私にとっていっそう深く印象に残るものとなりました。なお、金井さんがモーリシャスの切手を売り立てたオークションハウスディビットフェルドマン(David Feldman)のサイトには、英文の追悼記事が掲載されています。
デイビッド・フェルドマン

デイビッド・フェルドマンのホームページより。両手に持っている青い本は金井コレクションの競売目録。

さて、今回の記事で切手をもっと知るためのイベント&スポットに関する記事をいったん終了させていただきます。そして次回の記事からは、1つ1つの切手用語を深掘りするような記事を発信していきたいと思います!
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