空前絶後の手彫切手コレクションを形成
金井宏之さんの業績の中でひときわ異彩を放つのは、日本の郵便創業期の手彫切手コレクションを築いたことでしょう。金井さんが手彫切手の世界にのめりこんだのは、1949年に伏見宮博恭王(海軍軍人・皇族)が築いた筋の良いコレクションを入手したのがきっかけでした。ちょうど戦後、旧宮家から貴重な書画骨董が市場に流入していた時期の出来事のことです。その後、日本切手収集家フランク・J・ペプロウが築いた116シートの手彫切手のシートコレクションをアメリカで撮影し、『ペプロウ日本手彫切手シート・コレクション写真集』(1971年)として刊行。1970年にはペプロウ旧蔵のシートコレクションの里帰り(逆輸入)を実現させるなど、精力的な手彫切手の収集を展開し、空前絶後と言われる手彫切手コレクションを形成しました。
金井さんの収集品は有馬切手文化博物館で、毎年5月中旬に期間限定公開を行っていましたが、2014年にその主要部分を『日本手彫切手 金井宏之コレクション』(一般財団法人切手文化博物館、2014年)として刊行しました。
金井宏之初代館長との思い出
私事ながら、私自身、初めて切手文化博物館を訪れたのは、2010年のゴールデンウィークのことでした。博物館に入ると、駐車場には黒塗りのハイヤーが駐車していました。「ひょっとしたら金井さんに会えるかも?!」と淡い期待を込めながら入館すると、奥のほうには金井さんの姿が!!私が話しかけると、気さくに博物館のエントランス横の椅子をすすめてくれました。5月16日生まれ
金井さんからはしばらく手彫切手の話題を伺っていましたが、その後実は金井さん(大正14年)も私(昭和53年)も、同じ5月16日生まれ同士ということが分かり、「2人で一緒に5月16日の郵便や消印を集めよう!」という話になりました。5月16日の消印を見つける可能性は、単純計算すれば365分の1ですが、5月16日が日曜に当たる年は1000分の1以下の可能性になるとか、そんな話題で盛り上がりました。まだまだ伺いたいことはたくさんあったのですが、あっという間に小一時間ほどの時間が過ぎ去り、「ぜひまたお会いましょう」と言って別れました。筆者が生まれた昭和53年5月16日の消印。
さて、今回の記事で切手をもっと知るためのイベント&スポットに関する記事をいったん終了させていただきます。そして次回の記事からは、1つ1つの切手用語を深掘りするような記事を発信していきたいと思います!