年末年始だからこそ、じっくり見ておきたいドラマ
■サスペンスの奥深さに日常を忘れてみる
『眠れる森 A Sleeping Forest』 (1998年10月~12月 フジテレビ系列にて放送)
今も語り継がれる野沢尚脚本の本格サスペンスは、緑の呼吸に癒される森とすべてを包み隠す森、そんな森の明と暗を怪しく危うく描きます。失われた記憶が森の中に眠っているという意味も含め、複雑に組み込まれた神秘的な森に恐る恐る踏み込んでいく 感覚を体感できる作品です。
最後まで謎に包まれた人物たち。隠し続けた鋭利な感情が牙をむく瞬間の恐怖。極上のスリルは日常を忘れ夢中にさせてくれるでしょう。木村拓哉、ユースケ・サンタマリア、陣内孝則が魅せた若かりし日の研ぎ澄まされた演技も必見。殻を破ることに躊躇しない彼らの演技に注目してください。
■男たちの闘いを堪能する
『ハゲタカ』 (2007年2月~3月 NHKにて放送)
主人公・鷲津 政彦(大森南朋)の寡黙でありながらにじみ出る強い思いは、迫力ある圧巻の演技でした。
スピーディーな展開は息つく暇も与えず、社会派ドラマでありながら完成度の高いエンターテイメントと言える作品『ハゲタカ』は、数々の賞を受賞し映画化もされた社会派ドラマの傑作です。
■巨大な組織に立ち向かう勇気はどこから来るのだろう
『空飛ぶタイヤ』 (2009年3月~4月 WOWOWにて放送)
2002年に起きた大型トラックの脱輪事故を題材に、池井戸潤が大企業の抱える課題に取り組んだ渾身の作品『空飛ぶタイヤ』のドラマ化です。
小さな疑問が大きな“まさか”を気づかせる。しかし、組織が大きくなるほど軌道修正は困難になり、違和感に目を瞑り踏みとどまってしまうことは少なくありません。何を基準に判断していくべきなのか、時折見直し再確認することは必要なこと。そういう意味でも『空飛ぶタイヤ』は貴重な作品と言えます。特殊な才能を有する社員がバサバサと悪事を暴くわけではありません。ごくごく普通に仕事をしてきた人たちが「このままではいけない」と感じたとき、“まさか”にどう立ち向かうかが根気強く描かれます。葛藤あり困惑あり、立ちはだかる組織の壁と自分の中にそびえ立つ壁は、働く誰もが痛感する壁。見過ごしてきた社会への感度が高まる1作です。
今や個性的なキャラクターを演じる実力派女優の尾野真千子の派手さのないスーツ姿は新鮮。感情を見せないクールなキーパーソンにも注目です。
2014年は本当にありがとうございました。2015年が皆さまにとって素晴らしい年となりますよう、心からお祈りいたします。