日本人になろうと努力した竹鶴リタさん
竹鶴夫妻をモデルに書かれた長編小説。フィクションの部分もありますが、ご自身も国際結婚だった森瑤子さんならではの細やかな心情描写が味わえます。
実際の竹鶴リタさんも、ひたむきでポジティブで、自分にきびしく、日本人になろうとしてたいへん努力された方だったそうです。ドラマの中では最初から日本語を話せる設定でしたが、実際はまだ流暢には話せなかったようで、日本に来てから苦労された様子がうかがえます。
夫のために日本料理は相当勉強されたそうで、ドラマと同じく、毎日かまどでご飯を炊き、味噌汁を作り、タクアンなどの漬け物も自分で漬けていたとか。日本の生活習慣も尊重して、お正月は必ず着物を着たそうです。一方、故郷スコットランドの料理もよく作ったそうで、午後のお茶の習慣も欠かしませんでした。
そんなところも、現在の私たちに通じるとことがあるかもしれませんね。夫の好きな料理を研究し、その国の生活習慣や行事を学び、なおかつ自国の味もキープし、子供たちに伝えていく。そんな努力を、国際結婚の妻たちは世界中のあちこちで行なっているのだと思います。
リタさんの時代と大きく違うのは、ふるさとへの距離の近さでしょう。彼女は日本に来て約40年、64歳で亡くなるまでの間に、たった2回しか里帰りすることができませんでした。
交通機関が発達を遂げた現代、実際の移動距離と時間は当時とは比べ物にならないほど近くなりましたし、インターネットによる「近さ」も驚くものがあります。一般に広く普及してからまだ20年ほどですが、隔世の感がありますよね。おかげで、遠く離れた外国に住むことになっても、家族や友達とどこかでつながっていられる安心感が生まれたような気がします。
そんな恵まれた時代を、ドラマを見ながら感謝したいですね。