動物の守護聖人、聖アントニオのお祭り
アントニオという名前の聖人はたくさんいますが、今回紹介するのは3世紀のエジプトに生まれ、修道生活を送った聖アントニウス(Sant'Antonio abate)。伝統的に動物、特に家畜の守護聖人とされ、宗教画ではよく子豚を連れた姿で描かれます。その命日1月17日は聖アントニオの日ということで、動物が祝福を受ける日となります。この日だけは教会前の広場で、飼い主と一緒に家畜やペットが司祭から祝福を受けるという、一風変わった光景をみることができます。旅行中にペットを連れている方はあまりいないと思いますが、ペットの写真を持って行くもよし、旅のお供のぬいぐるみを連れていくもよし、とにかく動物好きには見逃せないイベントです。
サンピエトロ広場前では
イタリア各地で聖アントニオの動物のお祭りが催されますが、今回はサンピエトロ広場前の様子を紹介します。こちらでは早朝から家畜の小屋が設置されます。イタリア家畜業者協会AIA(Associazione Italiana Allevatori)の主催で、ラツィオ州の各地から業者が自慢の家畜を連れてきているのです。牛、馬、羊、豚、うさぎ、にわとりをあしらったAIAの旗があちこちにはためき、旗に描かれた動物たちの小屋が並びます。小屋の前に下がった札にはその動物の種類、所有業者名とその所在地が記されています。
動物をゆっくり見るなら、まだ人出のない早朝がお勧めです。お昼近くにパレードとメインイベントである動物の祝福があるので、さまざまなペットをつれた飼い主で広場はだんだん混み合ってきます。
動物の祝福を受けるために
動物の祝福を受けにやってくるのはペットとその飼い主だけではありません。なんと大勢の馬とその騎手がパレードをしながら広場にやってくるのです。テベレ川の方からコンチリアツィオーネ通りをさかのぼりサンピエトロ広場まで、騎馬警官隊を先頭に、大統領護衛騎馬憲兵や森林警備隊、牛追いやスカウトやシチリアの馬車まで、それぞれが制服や伝統的な衣装に身を包み馬を進めるさまは実に壮観です。中でも注目は、ラツィオ州北部やトスカーナのマレンマ地方から来た牛追い(butteri)たち。彼らは今でも伝統的な方法で、馬に乗ってマレンマ種という独特の形をした角を持った牛たちを追っているのです。
全員が揃ったところで、動物の祝福があります。サンピエトロ大聖堂での家畜業者のためのミサの後、バチカン聖堂司祭長コマストリ枢機卿が広場にやって来て、動物たちに祝福を与えるのです。それが終わるとあとはもうお祭り騒ぎです。音楽の演奏が始まり、馬や騎手と写真を撮ったり、シチリアの馬車は荷台に積んだシチリア産のオレンジを配り始めます。
動物と戯れ、パレードを見て、祝福を受け、オレンジのお土産までもらって、なんだか幸せな気分。動物万歳。
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■Benedizione degli animali(動物の祝福)
住所:Piazza Pio XII(サンピエトロ広場前)
日時:毎年1月17日。家畜は早朝から見学可能(公式には9:00~15:00)、10:30よりサンピエトロ大聖堂でミサ、馬のパレードと動物の祝福は12時ごろから
入場料:無料
アクセス:地下鉄A線Ottaviano駅下車、徒歩10分
問い合わせ:AIA 06-85451207, info@aia.it
※2014年のレポートです。その年により相違はありますので、ご了承ください。