CAD/CAM冠とは
CAD/CAM冠は歯科用のブロックから削り出して作り出されます。
2014年4月より健康保険で導入されるようになった歯科用のCAD/CAM(コンピューター支援設計・製造ユニット)装置を用いて制作されたかぶせもののことです。材料の白い色の歯科切削加工用レジン材料(ハイブリッドセラミック)のブロックから削り出して作成します。
ちなみに保険適応外のセラミックは、陶材を真空状態の窯の中で焼きあげて作るため、手間がかかりますが耐久性は抜群。普通の銀色金属のかぶせものは、手作業で歯の形のワックス原型を作り、これを石膏の筒の中に沈めて高温の炉の中で焼いて空洞を作り、その中に金属を流し込んで作る鋳造法が用いられます。保険適応のCAD/CAM冠では、手作業で作ったワックスをスキャンしてハイブリッドのブロックから削り出して作ります。
<目次>
CAD/CAM冠を利用するための条件
■かぶせる場所小臼歯部(犬歯の後ろにある小さな奥歯の2本)。上下左右に2本ずつ存在するため口の中で合計8本の部分のかぶせものが対応します。。
■単独の冠のみ
インレー(歯の中に埋め込むもの)やブリッジ(歯のない前後をつないで作るもの)、連結冠(隣の歯とつなげて作るかぶせもの)の場合には使用できません。歯をかぶせるタイプの形態のみです。
口の中に直接スキャナーで画像を取り込みその日のうちに作成するタイプではありませんので、金属冠などと同様に型をとってから取り付けるまでに1週間程度時間が必要になることが多いようです。
CAD/CAM冠の特徴……金属アレルギーの有無、保険適用後の価格など
実際にCAD/CAM冠治療を行って気がついたことをまとめてみます。■色
自費治療で行われるセラミック冠に比べると、単調な色で透明感が少ないため自然感に乏しい感じで逆に目立ちます。しかし金属の銀色のかぶせものに比べれば、はるかに目立ちにくくなります。
■強度と硬さ
セラミック冠が金属冠と同様な強度を持っているのに対して、金属ほどの強度はないため、欠けたり破折して外れたりするリスクがあります。それでも以前のレジンジャケットクラウン(樹脂のみで作る白いかぶせもの)に比べれば強度は向上しています。表面の硬度はセラミック冠や金属冠ほどの硬さはありません。しかし逆に硬すぎることもなく適度な磨耗が起こるため、噛み合わせに優しいかぶせものです。
■金属アレルギー
歯科で利用されている合金は、健康被害やアレルギー反応などを起こしにくい配合に調整されています。それでも金属を常に口の中に入れておくため、アレルギーのリスクは排除できませんでした。しかしCAD/CAM冠は金属を全く使用しないため、金属アレルギーの心配がなくなります。
■歯の切削量
かぶせものは厚みによって強度が決定します。実用に耐えられる強度を得るためには、金属冠よりも厚みが必要になります。歯の大きさを元々の自分の歯の大きさにするためには、金属冠などよりも歯をより多めに削り、土台を小さくする必要があるため、かぶせるための歯の切削量はやや多くなります。
■価格
金属冠が概ね4千円程度、CAD/CAM冠は概ね8千円程度かかります。(健康保険利用で、負担割合3割で計算。かぶせもの部分を同じような歯で比較可能な設定にしたため、実際の窓口金額ではなく目安です。)
歯科医が考えるCAD/CAM冠のメリット・デメリット
実際の臨床でCAD/CAM冠を利用するかどうかの判断に必要なのは、審美的なメリットだけではなく、強度と耐久性のバランスです。歯のかぶせものは歯を削れば削るほど、かぶせもの自体の厚みをとることができるので冠の強度や耐久性が高くなっていきます。しかし今度はかぶせるための土台が小さくなってしまうため、かぶせものがそのまま外れやすくなっていきます。金属冠は見た目は悪いですが、歯を削る量はかぶせものの中でジルコニア系のかぶせものと同じぐらい少なくて済みます。そのため歯をより残すことができ、冠そのものも外れにくくすることができます。もちろん金属製のため耐久性は折り紙付きです。もし金属冠が外れやすいようなスペースの歯に、CAD/CAM冠を使用すれば、破損か外れるトラブルが繰り返す可能性があります。
保険の適応がないセラミック冠は審美性が最も歯に近く、さらに劣化がほとんど起こらないため、艶がいつまでも持続します。しかしCAD/CAM冠は、最初は艶があってもだんだんと表面が劣化して数年で艶がなくなっていきます。審美性もセラミックほどの色はなく、あくまで金属より優れているという感じです。このためCAD/CAM冠は、審美面と耐久性のどちらも優れているセラミック系のかぶせものと、耐久性の金属とのちょうど間に増えた選択肢の一つとして考えるとよいと思います。
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