腹痛の原因を「臓器の場所」から考える

考えている医師

腹痛の原因は多岐にわたるので、様々な病気が考えられます

腹部症状から腹痛の原因を特定するのは想定される臓器が多く難しいのですが、ある程度は絞り込むことは可能です。

まず、痛みの場所に想定される臓器から予測してみましょう。「痛みの種類、部位から腹痛の原因を予測する」の記事を参考に、想定される臓器を予測します。

腹痛を下痢や便秘などの「症状」から予測する

  1. 下痢を伴う場合
    小腸や大腸の病気が考えられます。急性の嘔吐・下痢の場合は、急性胃腸炎が疑われます。抗生剤を飲んでいる場合は、偽膜性腸炎や薬剤性腸炎による下痢の可能性もあります。O-157などの腸管出血性大腸菌による感染症腸炎では激しい腹痛と共に下血を伴います。虚血性腸炎も下痢はそこまで激しくはありませんが下血を伴います。虚血性腸炎は下行結腸に好発するので、左側腹部から左下腹部が痛みます。

    慢性の下痢であれば、潰瘍性大腸炎クローン病などの炎症性腸疾患や、過敏性腸症候群の可能性があります。大腸がんは、下痢にも便秘にもなり得るので注意が必要です。膵臓の病気でも下痢になることがあります。

  2. 便秘を伴う場合
    小腸や大腸の病気が考えらます。通常は機能的な問題が考えられますが、成人の便秘の場合は、大腸がんなどの悪性腫瘍が関与している場合があるので注意が必要です。便秘となる病気としては、大腸がんの他、腸閉塞(イレウス)や便秘型の過敏性腸症候群などがあります。過敏性腸症候群は、女性は便秘型が多く、男性は下痢型が多いとされています。

  3. 嘔気・嘔吐を伴う場合
    もっとも頻度が高いものは、胃や腸の病気によるものです。食後30~60分以内の嘔吐は、胃や十二指腸によるものが考えられます。胃・十二指腸の病気としては、急性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどがあります。

    小腸や大腸の閉塞による腸閉塞による嘔吐の場合は、大量の嘔吐を何度も繰り返します。一般的に、腸閉塞はお腹の手術をした人によく認められます。腸閉塞の嘔吐の多くは、胆汁用、便汁様です。

    また、胆嚢や膵臓、尿管結石、心臓、婦人科の病気でも嘔気・嘔吐を伴うことがあります。悪阻(つわり)でも嘔気・嘔吐を認めます。
     
  4. 血便を伴う場合
    黒色便ならば胃や十二指腸などの上部消化管、暗赤色や鮮血便の場合は小腸や大腸からの下部消化管出血が考えられます。血液は胃酸との接触や時間とともに色が変わります。鮮血の便は、肛門から近い場所からの出血の可能性が高いといえるでしょう。

    急性の場合は、虚血性腸炎、大腸憩室出血、一部の感染性腸炎、出血性胃潰瘍、出血性十二指腸潰瘍などが考えられます。慢性の場合は、痔出血、大腸がん、大腸ポリープ、胃がん、胃ポリープ、潰瘍性大腸炎、クローン病などがあります。

    感染性腸炎や潰瘍性大腸炎は下痢の頻度が高く、大腸憩室出血は下痢の頻度はそこまで高くはありません。クローン病は下痢の頻度に比べて、血便は軽度のことが多いです。

  5. 吐血を伴う場合
    出血性胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん、食道静脈瘤破裂、マロリーワイス症候群、逆流性食道炎などがあります。食道静脈瘤破裂は肝硬変など肝臓が悪い人で起こり、大量に出血します。マロリーワイス症候群は飲酒後の嘔吐でよく出現します。

  6. 胸焼け、食物通過障害を伴う場合
    胸焼けの症状は胃食道逆流症でよく出現します。胃の病気でも胸焼けが起こることもあります。のどや食道付近の通過障害は食道がんを考えなければなりません。胃がんで通過障害を自覚することもあります。

    また、胃や食道の症状と思っていたら、「実は心筋梗塞だった」という例も少なくありません。みぞおち付近の痛みは心臓の病気のことがあるので注意が必要です。

  7. 血尿を伴う場合
    突然の背部の強い痛みと血尿がある場合は、尿管結石の可能性があります。しみるような痛みと頻尿、排尿痛、残尿感などを伴う場合は膀胱炎が考えられます。
     
  8. 黄疸を伴う場合
    肝臓が悪いか、肝臓から出る胆管という管が詰まると黄疸が出現します。総胆管結石、急性膵炎、胆管がん、膵臓がん、急性肝炎、肝硬変などが考えられます。肝硬変やがんは、黄疸の割に痛みはそこまでありません。

腹痛を「腹痛のタイプ」から予測する

波をうったような強弱のある間欠性の痛みの場合は、胃や腸の内臓痛が疑われます。持続性の痛みの場合は、肝臓や膵臓などの実質臓器や尿管、血管などの痛みが考えられます。突然発症する痛みは、尿管結石や胆石などの結石疾患や血管疾患の可能性があります。

炎症が波及して、腹膜や腸管膜、横隔膜などに波及して起こる体性痛では限局的な鋭い痛みが持続的に継続します。体性痛は、急性腹症として外科的手術の適応となることも少なくありません。

腹痛を「食事との関係」で予測する

食後の痛みなど、食事との関連がある場合は、胃、十二指腸、胆嚢、膵臓の病気の可能性があります。胃潰瘍は食後に痛みます。逆に十二指腸潰瘍は空腹時に増強し、食後に改善します。胆石は油ものが多い食事、膵炎はアルコールの過剰摂取が関与します。胃もたれや早期満腹感の症状は、機能性ディスペプシアかもしれません。機能性ディスペプシアは、検査をしても特に異常がないのが特徴です。

腹痛を「年齢や男女差」で予測する

医師と女性の患者

「女性を診たら妊娠を考えよ」という医療ことわざもあります

潰瘍性大腸炎やクローン病は若年者でよくみられます。小児の腹痛は便秘が原因のことがよくあります。中高年以上では便秘と安易に診断せず「がん」などの悪性疾患を考える必要があります。大腸憩室炎や動脈硬化を伴う虚血性腸炎は中高年以上にみられます。女性は妊娠や卵巣嚢腫・附属器炎などの婦人科疾患などを常に頭に入れます。

腹痛を「病歴」から予測する

  • 刺身 ⇒ アニサキス
  • 生肉、生魚 ⇒ 細菌、ウイルスなどの食中毒
  • 生牡蠣ノロウイルスA型肝炎
  • アルコール多飲 ⇒ 急性膵炎、アルコール性肝炎
  • 海外渡航 ⇒ 食中毒、A型肝炎
  • 無月経 ⇒ 流産・子宮外妊娠
  • 痛み止め(消炎鎮痛剤)内服 ⇒ 急性胃炎、胃潰瘍
  • 抗生剤内服 ⇒ 偽膜性腸炎、薬剤性腸炎
  • 開腹手術歴 ⇒ 腸閉塞
  • 心房細動 ⇒ 腸間膜動脈塞栓、腎梗塞
  • 高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙などの動脈硬化因子 ⇒ 虚血性腸炎
  • 外傷 ⇒ 外傷による臓器損傷

お腹の痛みの原因は以上のように多種多様ですが、場所や症状を組み合わせることで原因を絞り込むことは可能です。ただし、お腹の痛みに対して自己判断で我慢するのはよくありません。心配な点があったら近くの医療機関に相談してみましょう。

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