憧れていたことに挑戦する『うさぎのおるすばん』
とても愛らしい白いうさぎ。普段はベランダで過ごしていますが、家の中の様子を見て、密かに憧れを抱いていたようです。家族のみんなが泊りがけで出かけたある日、鍵が開いていた窓から家の中に入り込みました。泊りがけでお出かけするのに、ベランダに出したままでうさぎが逃げちゃわないの? 鍵をかけ忘れるなんて不用心!と突っ込みを入れたくなりますが、そこはファンタジーなので、あまり気にせずにいきましょう。いつも家の人たちがしていることを見ていて、自分もやってみたくて仕方がなかったうさぎ。『うさぎのおるすばん』は、やってみたかったことをうさぎが次々と体験していく、小さな冒険の世界として展開していきます。
うさぎはみーんな見ていた!
いつもベランダから見ていた、家の人たちの楽しそうで美味しそうな食卓。冷蔵庫を開けて好みのおかずをお皿に並べ、飲み物も添えて味わいます。お次は棚の上のビデオの物色。ようやくやってきたビデオを観るチャンスに、ホクホクとした様子です。ビデオを観る時は、お菓子を食べながら。みんなの様子、しっかり見ていたのですね。まだまだやりたいことはたくさんありました。お母さんがいつも鏡に向かってやっていること、お父さんが書斎でやっていること、子ども部屋の楽しそうなおもちゃたちで遊んでみること。ただまねをするだけでなく、オリジナルの遊びも生み出すうさぎ。元気いっぱいに躍動感のある姿に、絵本を読む子どもたちもどんどん引き込まれていくことでしょう。
うさぎの落し物……
新しい体験をたっぷりとしたうさぎは疲れ果て、ある居心地のよい場所で、ちょっとのつもりがたくさん眠り、何食わぬ顔でベランダに戻るのですが……。部屋のあちこちに、落し物をたくさんしてきたようですよ。何も知らずに帰宅した家の人たちは、その存在に不思議がるでしょうね。この落し物の描かれ方がとてもかわいらしくて、我が家の2歳児は、何回も読み直すごとに、各ページでその存在を見つけては声をあげて喜んでいました。韓国の作家による絵本。うさぎが小さなチマチョゴリを着てすまし顔で立っている姿もとても愛くるしく、うさぎへの愛がたっぷりと感じられます。もし韓国語で書かれている原作であっても、生き生きとしたうさぎの様子と次々繰り広げられるうさぎらしからぬ行動に、絵だけでも十分に楽しめそうです。
私も、子どものころに家でうさぎを飼っていた経験があるので、この絵本のうさぎは、表情、仕草、雰囲気まで存分にうさぎらしさが表現されているなあと思いました。うさぎ好きの方にはたまらない1冊ですね。