新国立劇場演劇部門が2014年の10月から上演してきた「二人芝居―対話する力―」シリーズ。その第3弾『星ノ数ホド』が12月3日に初日を迎えました。イギリスの劇作家 ニック・ペインが2012年に発表し、大きな話題を呼んだ本作の日本上演は今回が初めて。鈴木杏さん、浦井健治さんという二人の魅力的な出演者と、今、演劇界で最も注目される演出家の一人・小川絵梨子氏がどんな世界を創り上げているのか。初日前日に行われたゲネプロの模様をレビュー形式でお届けします!(12月16日に鈴木杏さん、浦井健治さんのインタビューコメント&新しい舞台写真を追記しました)。

あの日、違う道を選んでいたら……
無数の可能性に溢れた世界

舞台はロンドン。バーベキューの会場で偶然出会い恋に落ちる物理学者のマリアン(鈴木杏)と養蜂家のローランド(浦井健治)。ある”パターン”ではローランドに妻がいて、ある”パターン”ではフリーのニ人がそのまま付き合い始める。更にある”パターン”では二人は完全に別れ、別の”パターン”ではニ人はもう一度結ばれる。

……と、この流れ、一瞬「ん?」と思いますよね。本作『星ノ数ホド』では、二人の出会いと別れ、再会やプロポーズ、そしてマリアンに訪れる大きな転機と、様々な場面で同じようでいながら少しづつ異なったシーンが繰り返されることで物語が進行していくのです。

星

(撮影:谷古宇正彦)


この「同じシチュエーションでスタートした物語が、誰かの一言や行動で違う未来を誘発する」という展開からは、映画『バタフライ・エフェクト』や『スライディング・ドア』を想起するのですが(もしくは現在オンエア中のドラマ『素敵な選TAXI』とか)、本作の世界観がそれらと一味違うのは、【私たちが唯一のものと信じている”現実”は、実は無数に存在する”現実”の1つでしかない】という量子学的な視点を前提に描かれている点。この辺りは劇中、物理学者であるマリアンの台詞で少しづつ語られていきます。

と書いてしまうと何だか少し難しいと思われるかもしれませんが、舞台上の物語は至ってシンプル。全くバックボーンが違うアラサー男女の恋愛のもどかしさがスパイスになり、俳優二人のチャーミングさも相まって「あるある」と笑えるシーンも山盛りです。

物理学者・マリアンを演じる鈴木杏さんは自分の弱い部分を人に見せられない一見強気なキャラクターを好演。困難にぶつかった時に、一番近くにいるローランドに頼るのではなく、一人で抱え込もうとする姿に痛みが走ります。母親との葛藤や自分の人生の選択……マリアンの不器用な生き方が身につまされる女性も多いのではないでしょうか。

星

(撮影:谷古宇正彦)


そしてローランド役の浦井健治さん ← 次ページ