鎌倉・江ノ島の観光・旅行/鎌倉・江ノ島 季節(春夏秋冬)の観光

鎌倉・早咲きの梅と瑞泉寺のスイセンを訪ねて

きりりとした空気の中、梅やスイセンをたずねて鎌倉散策へ。清楚にスイセンが咲く瑞泉寺から、鎌倉一早く咲くといわれる紅梅がほころぶ荏柄天神社、頼朝公の墓を経て、あでやかに冬ぼたん咲く鶴岡八幡宮まで歩くルートをご紹介しましょう。

村田 江里子

執筆者:村田 江里子

鎌倉・江ノ島ガイド

梅観賞におすすめのコース 瑞泉寺~荏柄天神~鶴岡八幡宮

鎌倉で2月上旬に梅をたずねて歩きたいと思ったら、鎌倉一早く咲くといわれる紅梅のある、荏柄天神を訪れるのがおすすめ。赤い社殿のそばに咲く紅梅は、目にも鮮やか。

荏柄天神社の紅梅

鎌倉一早く咲くといわれる荏柄天神社の紅梅


また、奥座敷にある瑞泉寺のスイセンは、清楚なたたずまいです。これらを結んで歩く際は、坂の上にある瑞泉寺から降りながら散策する道順が、歩きやすくておすすめ。そこから頼朝の墓の前を経て、趣ある冬ぼたんが咲く、鶴岡八幡宮のぼたん苑を訪れましょう。

ご紹介するルートの地図

ご紹介するルートの地図


 

瑞泉寺 ~清らかにスイセン咲くお寺

まずは鎌倉駅からバスに乗り、瑞泉寺へ。大塔宮バス停で下車し、鎌倉宮の境内を抜けて、北へ進んでいきます。途中で、源頼朝がつくったお寺の跡・永福寺跡(ようふくじあと)に立ち寄り、復元された庭園跡を眺めてみましょう。

突き当りのT字路を右へ。ゆるやかな上り坂を歩くと、やがて瑞泉寺に到着します。門を入って左手の小道は、歴史を感じる風流な枝振りの梅がたくさん植えられています。ここは日陰がちで咲き始めが少し遅く、2月中旬ごろから、見ごろを迎えます。
瑞泉寺門の脇にある梅林

瑞泉寺門の脇にある梅林


足元に、ちらほらスイセンが咲いていることも。12月ころから少しずつ咲きはじめ、2月ごろまで長く咲きます。瑞泉寺では境内のあちこちで、スイセンの花を見ることができます。
スイセン

清楚な白いスイセン


石段を登っていきましょう。道は二手に分かれます。左手の苔むした石段は男坂、右手の歩きやすく整備された道は女坂。男坂のすり減った石段には、多くの人がお参りして歩いた歴史が刻まれています。

冬なら、参道わきにアオキの赤い実がたくさんなっているかもしれません。
冬に赤い実をつけるアオキ

冬に赤い実をつけるアオキ


冬でもあおあおと葉を茂らせることから、アオキという名がついたそう。鎌倉の薄暗い森では、よく見られる植物です。長く地元に住む方から、赤い実をだるまさんになぞらえ、「ダルマノキ」と呼んでいたよ、とうかがったことがあります。実を鉄砲の玉にして遊んだりもされていたとか。


瑞泉寺本堂と禅の心が表された庭園を拝見

門をくぐって、本堂へ。瑞泉寺の開山は、夢窓国師。室町時代ごろ関東や東国を治めていた鎌倉公方の代々の菩提寺として栄え、関東十刹の第一位に数えられた、格式の高いお寺です。
瑞泉寺本堂

雪景色の瑞泉寺本堂
 


本堂左手に進んだ先の小さなお堂には、「どこもく地蔵」さまがまつられています。
どこもく地蔵

どこもく地蔵さま


昔、この像をお守りしていた僧が、貧しくつらい生活から逃げ出そうとしたところ、このお地蔵さまが「どこもく(苦)、どこもく」と言ったので、男は「どこへ行っても苦しいことは同じだ」と悟り、よそへ行くのをやめたのだそう。

一番奥に、夢窓国師により築かれた、国名勝の庭園が広がっています。
禅の心が表された瑞泉寺の庭園

禅の心が表された瑞泉寺の庭園


山から引いた水を、ゆったりとたたえた池。そのほとりに咲く、白いスイセン。岩壁をうがってつくられた洞窟のうちの1つは、水月観音場と呼ばれます。夢窓国師はこの中に座って坐禅を組み、水面に映る月を眺めたとのこと。自然と一体となることを目指す、禅の心が表された庭。その心をうかがい知ることはできるでしょうか。

お庭を回ると、山並みを眺め、休憩できるベンチもあります。そのそばにある石碑の奥の塚に、動物の石像が。これは、むじな塚と呼ばれています。
むじな塚

伝説の残る「むじな塚」


昔、瑞泉寺の留守番のおじいさんとおばあさんがいました。下のお寺のおじいさんは、ときどき夜に訪れて、ご馳走をいただいて帰ります。ある夜、訪れたおじいさんを家に入れ、火に当たらせてあげると、おじいさんはつい居眠り。その姿を見ると、なんとむじなではありませんか。化けの皮がはがれてしまったのです。

人に化けてはご馳走を食べていたむじなを、おじいさんは、焼け火箸でつついて殺してしまいました。しかし、やはりかわいそうなので、お墓をつくってやったそう。それが、このむじな塚です。自然が豊かだったころ、動物たちは、こんなお話になるほど、身近な存在だったのでしょうね。

静かな境内の趣を味わったら、瑞泉寺を後にして鎌倉宮に戻りましょう。

<DATA>
■瑞泉寺
住所:鎌倉市二階堂710
アクセス: 大塔宮バス停から徒歩約20分
ホームページ


荏柄天神社 ~鎌倉一早く咲く梅の花

鎌倉宮正面の鳥居を出たら、そのまままっすぐ伸びる道を進みます。やがて最初の十字路を右折。すぐに、荏柄天神社の鳥居に出ます。

階段を上っていくと、鮮やかな朱塗りのお社(やしろ)が。
寒紅梅咲く荏柄天神社

寒紅梅咲く荏柄天神社


拝殿の右側にあるのが、寒紅梅(かんこうばい)。1月中旬ころからちらほらと咲きはじめ、例年、鎌倉ではどこよりも早く開花が見られる、早咲きの梅です。社殿の朱色や背後の山の緑と相まって、新春にふさわしい、おめでたい印象。

荏柄天神社は、菅原道真公をまつる、日本三古天神の1つ。学問の神様としても知られています。境内には、合格や、学業成就を祈願してかけられた絵馬がたくさん。
学業成就を願う絵馬がたくさん

学業成就を願う絵馬がたくさん


菅原道真公は学者の家に生まれ、右大臣にまで昇格しました。しかし謀反(むほん)の疑いをかけられて、九州の大宰府まで左遷されてしまったのです。道真公は、「東風(こち)吹かば 匂い起こせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな」と詠み、京を後にしました。

不思議なことに、京の庭にあった梅は一夜にして大宰府の道真公の住まいのそばに根づき、辺りに先駆けて花を咲かせたとか。そんなお話をほうふつとさせる、早咲の梅です。
寒紅梅の花

青空に映える寒紅梅


境内奥には、絵筆塚があります。154人の漫画家による、カッパが刻まれたレリーフが付いた絵筆形の碑。鉄腕アトムやドラえもんの顔をしたカッパなどを探すのも楽しみ。
荏筆塚のカッパのレリーフ

絵筆塚。上に見えるのは鉄腕アトムのカッパ


足元には、つやつやしたマンリョウの赤い実が。鎌倉の山にも自生する木で、冬に赤い実をたわわにつける「万両」は、縁起物としてよく植えられています。
マンリョウの実

つややかなマンリョウの実


寒紅梅の咲くころは、ちょうど受験シーズン。お参りする人々を見守るように、樹齢900年というイチョウの大木が、悠々と立っています。

<DATA>
■荏柄天神社
住所:鎌倉市二階堂74
アクセス:天神前バス停から徒歩約3分
ホームページ(中央のウメの絵をクリック)


源頼朝公の墓 ~鎌倉幕府を開いた将軍さま

荏柄天神を出たら、鳥居の前の道を西へ進んでいきましょう。車通りの少ない静かな道を歩いていくと、やがて公園のある十字路に出ます。この公園奥の階段上に、源頼朝公の墓があります。
源頼朝の墓

源頼朝の墓


鎌倉幕府を開き、約680年間続く武家政権の礎(いしずえ)を築いた頼朝公。その将軍のお墓にしては、簡素な趣の、野ざらしの石塔です。1211年、鴨長明はここを訪れ、「木も草も なびきし秋の 霜消えて むなしき苔(こけ)を 払う山風」と詠んだそう。

この高台から見下ろせるのは、かつて頼朝公が築いた大蔵幕府跡。今は住宅地となっていますが、寝殿造りの幕府が広がっていた様子を思うと、景色が一段を奥行きを増して見えてきます。
ヤブツバキ

ヤブツバキ


辺りの森には、ヤブツバキの紅色の花。鎌倉の山に多く自生しており、12月ごろから3月ごろまで花を咲かせます。深い森に包まれたこの一帯は、日差しが入りにくいところ。お墓の一段下の広場に差しかかるモミジの木は、紅葉が遅くまでずれ込み、年明けに赤く色づいた葉が見られることもあります。

<DATA>
■源頼朝公の墓
住所:鎌倉市二階堂710
アクセス:岐れ道バス停から徒歩約5分
Yahoo!地図


鶴岡八幡宮 ~わら帽子をかぶった冬ぼたんに出会う

頼朝公の墓の正面の道を少し南に進み、清泉小学校角の十字路を右折して、桜並木の間を進んでいきましょう。突き当たったら左折し、横浜国大附属小・中学校の敷地沿いに次を右折。まっすぐ進めば、鶴岡八幡宮の東門に出ます。

鳥居をくぐって、クスノキのそびえる流鏑馬馬場(やぶさめばば)を歩いて。広い参道に出ると、鶴岡八幡宮の赤い社殿が望めます。

後ろに山を背負い、正面に由比ヶ浜を望む、鎌倉の中心地。源頼朝公は京都でいう内裏に当たる位置にこの鶴岡八幡宮をつくり、幕府や自分の住居はその東につくって、お宮に仕える真心を表したといいます。源氏の氏神として信仰を集め、流鏑馬など幕府の重要な行事が、ここで行われてきました。信仰の歴史は受け継がれ、今もたくさんの人がお参りに訪れて、お正月三が日は、入場規制もかかるほど。

大鳥居の脇から、神苑・ぼたん庭園に入りましょう。赤、ピンク、白、黄色……わら帽子をかぶった、大輪のボタンの花々が迎えてくれます。
わら帽子をかぶった冬ぼたん

わら帽子をかぶった冬ぼたん


大きくつややかな花弁が幾重にも重なる、華やかな姿。ボタンは中国では「花王」と呼ばれ、おめでたい花として珍重されてきました。

普通、ボタンは4月ごろに咲きますが、鶴岡八幡宮の「冬ぼたん」は、ちょうどお正月ころに見ごろを迎えます。1年以上、冬よりも寒い状態で温度管理したもので、展示される時期を春と思い込ませ、開花させるもの。寒さよけ・雪よけのわら帽子は、雪景色がよく似合いますね。
冬ぼたんの花

貝細工のような美しいぼたんの花


池のほとりをゆったり巡り、ベンチで一休み。源氏池には、尾の長いオナガガモや、美しい緑の頭のマガモなど、たくさんのカモたちが泳いでいます。
尾の長いオナガガモが泳ぐ源平池

尾の長いオナガガモが泳ぐ源平池


鶴岡八幡宮を出たら、小町通りなどをそぞろ歩きながら、鎌倉駅へ戻りましょう。新春の花々をめぐる散策で、すてきな1年のスタートが切れたらいいですね。

<DATA>
■鶴岡八幡宮 神苑ぼたん庭園
開 園:1月上旬~2月下旬、3月下旬~5月中旬
拝観料: 大人500円
アクセス: JR・江ノ電鎌倉駅東口から徒歩約15分 鶴岡八幡宮境内
ホームページ

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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