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トラブルを避ける「労働契約の基本」(2ページ目)

入社時と退職時は労働契約についてのトラブルが最も多い場面です。思わぬ事態に陥らないために、労働基準法で定められた「労働契約の基本」をチェックしておきましょう。「はじめての労働基準法」第1回です。

長友 秀樹

執筆者:長友 秀樹

社会保険労務士試験ガイド


労働契約

(1)法違反の契約
前述したとおり、契約は本来当事者間の合意により結ばれるものですが、労働条件については不当に働く人が不利な条件を強いられないよう最低基準が定められています。そして、これは強行法規とされていますので、法律で定める基準を下回る契約は、その部分に関して無効となります。

例えば、「会社に損害を与えた場合は○○円を賠償する」といったように、損害賠償額をあらかじめ定める契約は、労働基準法第16条(賠償予定の禁止)違反となり無効です。

(2)労働条件の明示
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雇入れ時の労働条件の明示事項

会社と働く人との間で起きるトラブルのうち、最も多いケースの一つといえるが採用時です。
特に、労働条件について、採用選考の段階と入社後で、「こんなはずじゃなかった」と双方の認識にズレが生じた場合にトラブルが起きやすくなります。

このため、労働基準法では、会社が労働者を採用する際に、お給料や勤務時間その他の条件について、書面で明示しなければならないと定めています。

(3)解雇
採用時と並んでトラブルが多いのが、退職時です。特に解雇は、会社から働く人に対して一方的に雇用契約の終了を通達するものであり、働く人にとっては生活に重大な影響が生じるものですから、法律でその手続きなどについて規制しています。

解雇に関する主な規定には、「解雇制限」と「解雇予告」があります。

解雇制限は、法律で解雇が禁止されている期間のことで、次の2つがあります。
○業務上の病気・ケガによる休業期間とその後30日間
○産前産後休業の間とその後30日間

解雇制限期間(労働基準法以外の法律で解雇が禁止されている期間もあります)でなければ、解雇は可能ですが、適正な手続きを取らなければなりません。それが「解雇予告」です。

解雇予告は、次のように定められています。
○会社が従業員を解雇するときは、30日前にその予告をしなければならない。
○予告をせずに即時解雇するときは、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払わなければならない。
解雇日までに30日以上の余裕がないときは、解雇予告をしたうえで、30日に不足する解雇予告手当を支払う必要があります。

なお、解雇制限のない期間に、解雇予告をし、解雇予告手当を支払えば、解雇が何でも許されるというものではありません。労働契約法という法律で、「会社が解雇権を濫用したと認められる場合は無効」と定められているからです。

具体的には、会社が、勤務成績の悪い従業員を解雇したいとしても、何の前触れもなくいきなり解雇するのは権利濫用であり、従業員に改善を促すための注意・指導を十分に行ったにも関わらず、一向に成績が改善しない場合にはじめて解雇が有効となるものです。

終わりに

さて、入社時と退職時の「労働契約の基本」についてご理解いただけましたでしょうか?
日本ではまだまだ「契約なんて堅苦しいことは抜き」という風潮もありますが、「言った・言わない」でトラブルになることが多いのも事実です。
労使で無用なトラブルにならないためにも、労働契約の基本をしっかりと押さえておきましょう。

次回は、働く人の必須知識「労働時間の仕組み」を解説します。
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