ピロリ菌は消化器官やその他の疾患にも影響アリ
年を重ねるとともに気になる、胃炎や胃潰瘍などの内蔵の不調
しかし、近年はピロリ菌が、慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんの大部分の原因である可能性が高いと見られています。日本人の感染者は、全人口の半分にものぼる約 6,000 万人。若い世代は少ないのですが、 50 歳代以上で 70~80%が感染しているとみられています。
また世界人口においても約半数が感染していますが、東南アジアなどの発展途上国で高い感染率を示しており、上下水道の普及の遅れから井戸水を利用することで経口感染していると考えられます。
先進国は比較的感染率が低いにもかかわらず、日本は例外的に感染率が高くなっています。ただ、戦後の急速な衛生状態の改善により、若い人の感染率は低くなっているため、今後はより減っていくでしょう。
ピロリ菌が発見され、論文が発表されたのは1983年と最近のことで、それまでは胃酸があるから細菌類は棲息できないと考えられていました。しかし、ピロリ菌は胃粘液中の尿素を分解してアンモニア(アルカリ性)をつくり、部分的に中和することで胃に棲みついて(感染)していまいます。
胃粘膜に作用して胃炎に、さらに続くと胃粘膜が萎縮してきて萎縮性胃炎になり、胃液の分泌も減ってきます。そして消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)、胃がん、胃MALTリンパ腫、胃過形成ポリープなどと消化管疾患が引き起こされるとみられています。また最近は、突発性血小板減少性紫斑病(ITP)、鉄欠乏性貧血、慢性蕁麻疹など、消化管以外の疾患との関連性も指摘があります。
日本人の胃がんの多くはピロリ菌が関わる
日本人の胃がんのうち、ピロリ菌が原因となっている確率は高いと見られています。ただ、ピロリ菌に感染した人すべてがこれらの病気を発症するわけではありません。というのは、ピロリ菌だけでなく、生活習慣やメンタルヘルスなどの様々な要因が絡み合っているからです。また、胃については悪い作用を及ぼすリスクは高いのですが、食道では逆に疾患を予防するという見方もあります。
胃がん発症のリスクを高める要因としては、ピロリ菌以外にも、塩分の過剰摂取、新鮮な野菜や果物摂取不足、喫煙、胃酸分泌低下なども上げられます。