「タスク・アンビエント」で無駄を省き、心地よいあかりを
上の写真は、家族みんながそろったときの団らんのシーンをイメージしています。下の写真は、夕食後や休日に、夫婦でゆっくり映画などを楽しむシーンを想定したコーディネートです。
この照明手法は、専門的用語で「タスク・アンビエント」といわれます。タスク(task)は「仕事・作業」のこと。アンビエント(ambient)は「周囲・環境」です。「タスク・アンビエント照明」という場合は、作業面を照らすあかりと、周囲を照らすあかりを組み合わせる照明手法のことを指します。タスク照明では作業などに必要な明るさを、アンビエント照明では部屋全体の明るさを確保するのです。この2つの照明を組み合わせて明るさを調整することで、無駄なあかりを減らすことができ、ひいては節電につながるため、賢い省エネ法としてオフィスの照明にも取り入れられています。
タスク・アンビエント照明を取り入れるときの注意点は、「タスクさえ明るければ、アンビエントは暗くてもよい」と考えられがちなことです。
例えば、テレビなどを見るときにテレビの付近だけを明るくすればいいと考えるのは誤りです。よく「部屋を暗くし過ぎず、部屋全体を適度に明るくしましょう」と言われますが、これはテレビ画面と周囲の明暗の差が大き過ぎると、目が疲れてしまうからです。こういった場合は、部屋のコーナー部分や天井を照らして明るさを補うようにしましょう。そうすれば、画面に集中しすぎず、目の負担を軽減できると思います。天井に照射された光は、壁や床にバウンドして空間全体にやわらかな明るさをもたらします。このことは、前回の「LED照明で素敵に変身!夜を愉しむためのあかり」で詳しく説明している通りです。
食事や家族団らん、映画鑑賞など、シーンに合わせてタスク・アンビエント照明を上手に取り入れれば、必要な明るさを得ながら不要なあかりをカットできます。これが節電につながると言われている所以なのです。
「ひとりのシーン」では必要な場所にあかりを
普段の生活の中で、ひとりで過ごす時間もあると思います。この写真は、そんなシーンを想定したものです。「例えば、子どもを寝かしつけた後や、夫の帰宅を待つときのイメージです」と土橋さん。
照明の手法としては、前述のタスクという方法の具体例だといえます。この写真のフロアスタンドのように、セードによって光の向きを自在に変えられる照明器具は、用途を限定せず幅広いシーンに活用できるので、とても便利です。
ひとりで本を読むなど、人数や用途が限定できる場合は、部屋全体を均一に明るくするのではなく、必要な場所に必要な明るさがあればすみます。こういった例を見ていくと、複数の照明器具を配置する「多灯分散」は、シーンに合わせて使い分けができるとても便利な手法だと理解いただけるのではないでしょうか。前述のタスク・アンビエントも、多灯でなければ実現できないことですが、フロアスタンドなら工事もなく取り付けも簡単ですから、買ってきたその日から実践することができますね。
多灯分散で省エネを実現しつつ、あかりを使いこなす
このように、多灯分散であれば、複数の照明を点灯・消灯することによって、いろいろなシーンに幅広く対応させることができます。さらに、調色・調光機能を持つ照明器具を加えておくことで、柔軟にあかりを調整することができるでしょう。さらに、LED照明器具はもともと省エネが特長ですから、多灯であっても光熱費が大きくかさむことはないでしょう。むしろ、シーンに合わせて複数の照明器具から不要なものを消し、最適なものだけを点灯することで、光熱費削減につながる可能性が広がります。
LED照明器具とひと口にいっても、近頃ではさまざまなデザインの製品や、たくさんの機能を持った製品が増え、選択の幅が広がってきました。好みのデザイン、部屋の雰囲気を一新できるようなLED照明器具を見つけることができるでしょう。
もちろん、部屋のすべてのあかりを同時にLED照明に替えなければならないということはありません。まずは気軽な気持ちで、取り入れられそうな部分から挑戦してみてください。自分ひとりで決めるのが心配な方は、照明器具の売り場で専門知識のある販売員と相談しながら選ぶことをおすすめします。満足のいくように、自分のライフスタイルや部屋に合ったLED照明器具を選びましょう。
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撮影協力:LIVING MOTIF、天童木工、タカタレムノス(詳細はこちら)