ピロリ菌がいるだけで胃の症状を起こすことも

お腹の調子が悪い男性

お腹の調子が悪いのはピロリ菌のせいかもしれません

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)が胃の中に存在すると、胃粘膜を持続的に障害し胃炎を引き起こします。そして、慢性胃炎を背景として、「萎縮性胃炎」、「消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)」、「胃MALTリンパ腫」、「過形成ポリープ」、「機能性ディスペプシア」、「胃がん」などの上部消化管の病気が引き起こされます。

消化性潰瘍や胃がんで胃の症状がでるのはもちろんですが、慢性胃炎でも胃の症状がでることがあります。慢性胃炎ではピロリ菌が長期間にわたって慢性的に障害するため、粘膜が委縮しだんだん薄くなってしまいます。慢性胃炎になると、「みぞおちあたりの軽い痛み」、「胃が張った感じ」、「胸焼け」、「ゲップ」などの症状が出やすくなります。

また、胃カメラなどの検査をしても明らかな病気がないのに、「胃もたれ」、「早期満腹感」、「みぞおちの痛み」、「みぞおちの灼熱感」などの症状が慢性的に起きる機能性ディスペプシアの原因としてもピロリ菌が関与していることがあります。

この病気は以前「機能性胃腸症」と呼ばれていた病気で、上腹部症状を訴え消化器の専門機関を受診した半数がこの病気だったというぐらいよくある疾患です。この疾患の一部はピロリ菌が関与することで生じると考えられており、除菌治療をすることで症状が改善することがあります。

胃がんの主因はピロリ菌!慢性胃炎も保険適応に

世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は、2014年9月「胃がんの80%はピロリ菌感染が原因で、除菌によって胃がん発症を30~40%減らせる」との報告書をまとめました。胃がんの主因はピロリ菌であることが判明しており、ピロリ菌に感染している場合は積極的に除菌した方がいいでしょう。

特に日本は先進国の中でも著しくピロリ菌感染者が多く、50歳以上では70%以上が感染しているという統計があります。そして、ピロリ菌感染の期間が長ければ長いほど、胃がんになりやすい萎縮性胃炎の程度が進行するとされています。国立がん研究センターでは、「胃の萎縮の程度が進むと胃がんのリスクも上がる」という研究結果を報告しており、ピロリ菌の早期発見・早期除菌が効果的といえます。

ピロリ菌の問題点が明らかになるにつれて、除菌の費用も軽減しています。以前はピロリ菌がいるだけでは医療保険で除菌治療を行うことができず、患者さんの自己負担もかなり大きなものでした。しかし、2013年2月から「ピロリ菌がいる慢性胃炎」も医療保険での治療が可能となり、除菌治療のハードルがグッと下がっています。

ピロリ菌治療で「世界が変わる」!?

イヌと笑顔の男性

ピロリ菌除菌で世界が変わることも

また、ピロリ菌治療を行うことで、劇的に胃の症状が改善する人もいます。

慢性胃炎で慢性的に胃の不調を訴えていた中年の患者さんに除菌治療を行ったところ、「(除菌治療をしてから)世界が変わった。例えて言うと、今まで視力が0.5で、それが普通の世界だと思っていたけど、治療をしたら視力1.5の世界に変わった感じ。おかげで体調も良くなって、体重が2キロも増えました(笑)」と話していました。

もちろん、すべてがこのように改善するわけではないと思いますが、このような例もあるので、ピロリ菌がいる慢性胃炎は除菌を検討してみると良いでしょう。

ピロリ菌の治療法と問題点

ピロリ菌に対する除菌療法は現在、一次・二次除菌療法が保険適応とされています。一次療法は、胃薬のプロトンポンプ阻害薬に抗菌薬のアモキシシリンとクラリスロマイシンを加えた3剤を朝・夕食後に1週間内服します。一時療法で除菌できなかった場合は、二次療法としてクラリスロマイシンをメトロニダゾールに変更して1週間内服します。

問題点としては、一次除菌の除菌率が低下してきているということがあります。これは、小児科、呼吸器科、耳鼻咽喉科領域を中心にクラリスロマイシンが高頻度に使用されていることに伴い、耐性菌が増加することで除菌成功率の低下をきたしていると考えられています。

ヨーグルト

ピロリ菌に効果がある食品もあります

喫煙者では除菌率が低いという報告もあるので、可能なら除菌と同時に禁煙を開始した方が良いでしょう。

ピロリ菌に抑制的に働くという食品もいくつか知られおり、併用するのも良いと思われます。東海大学医学部・高木敦司教授の研究グループは、一次除菌に乳酸菌Lactobacillus gasseri OLL2716(ガセリ菌LG21)を含むヨーグルトを併用することでクラリスロマイシン耐性ピロリ菌の除菌率が飛躍的に向上することを報告しています。

また、これに先立って行われた別の研究では、ピロリ菌保菌者がこのLG21乳酸菌入りのヨーグルトを8週間継続摂取したところ、ピロリ菌の数が大幅に減少したことも確認されています。

除菌成功後の注意点

ピロリ菌を除菌すると胃炎が改善し胃酸の分泌がよくなります。このため、胃酸が食道に逆流し食道の粘膜を傷つける一過性の逆流症状が新たに発生したリ、逆流性食道炎が増加したという報告もあります。

重症化する例はほとんどないと考えられ、除菌治療を行う妨げにはならないとされていますが、食道裂孔ヘルニアを有する場合は、除菌後に逆流性食道炎が発症しやすいとされているので注意した方がいいでしょう。

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