和室の良さは曖昧だからイメージしづらい
施主と初めての打ち合せで「どんな部屋と広さを希望していますか?」と尋ねると、リビング・ダイニング・子ども室と話し、最後に「できれば和室を6畳くらいはほしいのですが……」と遠慮気味に答える人がいます。その方に、「和室はどのような使い方をしますか?」と聞くと「何かあった場合に、どんな風にも使えて便利だから」との答えが返ってきました。何かあった場合とは、来客や親戚が泊まる部屋、将来自分達夫婦が歳をとった時の寝室として使うなどです。
しかしそれでは日常の和室のあり方が見えてきません。和室の良さは『曖昧』なのでイメージしづらいのです。
それではどのように考えればよいのでしょうか?
和室の考え方とつくり方
・個室としての和室始めから和室をつくりたいという人もいます。椅子式の生活の方が機能的にはとても便利でよいが、住まいに文化的な“根”が感じとれないという話をする人がいました。この“根”を求める欲求が、機能的快適さを多少犠牲にしてもゆとりや非日常性を演出したいという希望です。
このような人はわずかですが、はっきりした目的を和室に求めています。そうでなければ独立した和室はいつの間にか家族共有の納戸になるケースもあるので注意が必要なところです。
床ノ間は家としての品格も感じさせてくれる。
・LDとつなげた和室
近年の和室はリビングの延長という使い方が特徴です。ときには和室というより3~4畳の畳コーナーを設け上手に活用する人もいます。特に小さい子どもがいる時には昼寝のスペースに利用したり、取り込んだ洗濯物を一時的に置くユーティリティースペースとしても活用できます。
また、リビングとのつなげ方も、段差をつけるか・つけないか、開放的につなげるか・閉鎖的につなげるか、によっても和室の性格が変わってきます。
段差を設けることで間伸びもせず空間にアクセントを与えている。
・やや閉鎖的につないだ和室
段差の高さなどの工夫で、個室としての性格を残しながら、時にはリビングの延長として使うこともできます。
和室の利用目的を明確に
「できれば和室を6畳くらいほしいのですが」と遠慮気味に答える人も、実は日本人の中にある畳への憧れからではないでしょうか。チラシの間取りなどを見ていると、この和室がなければもっとのびのびした住まいになるだろうと思うほど、無理して和室を入れているプランもあります。しかし、明確な目的をもたない和室は機能的ではないという理由で、和室は少なくなりました。
もちろん、限られた敷地面積では無理な場合もありますが、和室を『つくる・つくらない』で迷ったときは、「敷地条件を考えながら和室のもつ融通性」、それと「非日常を味わう気持ちを自分の心の中に持ち合わせているか」、この2つを明確にすることで、和室は個室であっても、リビングの延長としての和室であっても、その魅力を活かすことはできるのです。
写真はすべて:(株)佐川旭建築研究所 設計