秋ドラマの大穴
『ドクターX』、『相棒』、『きょうは会社休みます。』、ここまではだいたい予想通りですが、続く四番手が想定外の『素敵な選TAXI』。視聴率をとりにくいオムニバスドラマであり、また裏に連ドラが二本ある激戦区だけに、ここまで伸びるとは思いませんでした。
シリーズを通しての案内役は普通、『世にも奇妙な物語』のタモリに代表されるように最初にちょっと出るだけ。しかし『選TAXI』ではタクシー運転手・枝分(えだわかれ)が本筋にからむ活躍を見せ、かつ演じる男前・竹野内豊がとぼけた演技を見せている意外性が勝因でしょうか。
バカリズムの脚本も毎回違ったパターンを見せてくれて、楽しめます。
単独ヒロインでも
『ファーストクラス』も裏の『休みます。』と同じ、強烈な個性の単独ヒロインですが、大差をつけられています。吉成ちなみ(沢尻エリカ)は前シリーズの経験を活かしてしたたかさを増していますが、そのため清純さがなくなりマウンティングバトルの敵との差が目立たなくなっているところが難点。
また前シリーズは23時台と遅い時間で、放送時間も45分とやや短い。そのため濃いドラマが展開されてもサクッと見られましたが、22時台で1時間見るのはちょっと重たい感じがします。
映画は大丈夫?
フジテレビ55周年記念プロジェクトでこのあと映画も控えている『信長協奏曲』も冴えません。第一話は兄を押しのけて織田家の跡取りを狙う弟・織田信行がメイン。『アオイホノオ』に続いて柳楽優弥が暑苦しい演技を見せ、戦国時代のギラギラしたところと信長となったサブロー(小栗旬)の現代青年らしい淡白さなところが好対照。タイムスリップ時代劇のおもしろさがでていました。
しかし第三話は序盤の山場であろう桶狭間の戦いながら、村娘(前田敦子)がメインで今川義元(生瀬勝久)はあまり出番なし。歴史ドラマとしては食い足りないところが伸び悩みの原因でしょう。
わかる奴しか
もう一つ、期待の割に冴えないのは『ごめんね青春!』。宮藤官九郎の『あまちゃん』後、初となる連ドラ脚本で注目されましたが、「わかる奴だけわかればいい」という、いつものクドカン作品に戻ってしまいました。『あまちゃん』ではこれまでの型破りなスタイルを維持しつつも、しっかりと朝ドラ枠に収まっていました。そのため、いつも見ている朝ドラファンに加えて新しい層を呼び込んで大ヒット。しかし『ごめんね青春!』は男子高校生の考えるエロ要素が前面に出ていて、広い層が見る日曜21時には合いそうにありません。同じような路線の映画『中学生円山』は劇場でもキツそうでした。
この枠の前作『おやじの背中』は単発ドラマ時代の「東芝日曜劇場」に先祖返りしたような作品でしたので、その路線を引き継ぎつつクドカン要素を組み入れれば『あまちゃん』の再現を狙えたかもしれません。
視聴率グラフ