今回の災害から学ぶこと
全国的に晴天に恵まれた土曜日の昼。きっと多くの方が様々な場所で登山を楽しんでいたはずです。かく言う私は、大阪の河内長野で次の日の登山イベントを控えてコースのチェックを行っていました。山が好きな人誰もが噴火にショックを受け、その場にいたかもしれなかったことに恐怖を感じずにはいられなかったことでしょう。「自然は美しいけれど、時に怖いこともある」。私に登山の魅力を教えてくれた師匠、竹内敬一さんの言葉を思い出しました。八ヶ岳の山小屋「青年小屋」のオーナーで、社団法人日本山岳ガイド協会理事や山梨県北杜警察署山岳救助隊の隊長を務める竹内さんだったら、こういうときにどのように行動するのか。電話でお話を伺ってみました。
ガイドという仕事柄、お客様を安全に案内するためにいつも感覚を研ぎ澄ませ、危険をできるだけ早く察知する、ということを心がけているそうです。登山者の安全を第一に考える山岳ガイドという仕事をしていると、たとえば登山中の休憩場所を選ぶときにも「落石の危険がないか」、「風の通り道で体が冷えないか」、など周りの自然環境に対して神経を研ぎ澄ませています。お客さんを安全にガイドするためには、雲の動きや空気の流れなど、ちょっとした変化を察知し、先を予測する能力を日々高める必要があり、異変を感じる能力は人一倍高いつもりです。僕が山で異変を感じたら、10メートルでも50メートルでも早くその場から逃げる。その一瞬の行動で、助かる確率が少しでも高くなるかもしれないのです。だから、登山の際には危険をいち早く察知できるよう、周りの環境にアンテナを張り巡らせ、緊張感を持って臨むことが大切だと考えています。
今回の噴火による噴石は、避難小屋や登山用ヘルメットで太刀打ちできるようなものではないことがわかりました。活動が盛んな浅間山などで見られるシェルター(退避ごう)の全国的な設置について今後、議論が進むかもしれません。日本は昔から自然災害の多い国。災害を恐れ、忌み嫌うだけでは問題は解決しません。今回の災害を教訓に、たとえばどんな小さな情報も、登山者に対して開示すべきだということや、特に危険とされる活火山には金属製のシェルターを置くとか、シェルターにガスマスクなどを設置するなどの検討も必要かもしれません。
自然の恐ろしさを改めて痛感させられた今回の噴火。犠牲者の方々に心よりお悔やみ申し上げます。活火山に登るときに登山者自身が気をつけることは、噴火警報の確認、ガスによる立ち入り規制などを忠実に守ること。もし荷物に加えられるなら、携帯用の小ぶりの登山用酸素ボンベや花粉用のマスクを持ち歩くことで、ガスや火山灰から多少でも身を守ることができるかもしれません。