目において重要なビタミンAの役割
人間にとって、光を直接感じるところは、「目」です。 目の光を感じる網膜には色を認識するタンパク質(ロドプシン)があり、ビタミンAの複合体でできています。光が当たる前は、ビタミンAは折れ曲がった状態でロドプシンの中に閉じ込められています。しかし光があたると、折れ曲がった状態からものすごい速さでまっすぐな状態へ形が変わります。
時間でいうと200フェムト秒で起こるビタミンAの光異性化反応は、現在知られている最も速い化学反応の一つです。
1フェムト秒は「1000兆分の1秒」のことです。光は真空中で1秒間に約30万キロメートル(およそ地球を7周半)進むことができますが、200フェムト秒ではわずか1千分の6ミリメートル(6ミクロン)しか進めません。ロドプシンがいかに光に敏感なタンパク質であるかが分かります。
緑色葉野菜および黄色野菜や濃くて鮮やかな色の果物に含まれる βカロテンが体に吸収されると、分解されてビタミンAに変わります。植物はβカロテンなどの種々の色素で光エネルギーを吸収していますが、人間の目の光エネルギーを感じるタンパク質に、植物由来のビタミンAが使われているとは驚きです。
そのほかにもβカロテンは活性酸素除去など能力をもっており、細胞分化や細胞膜の安定に必須の物質で生命の重要な機能を担っています。
ビタミンAのアルツハイマーへの効果
また、熊本大学の研究グループは、ビタミンAの活性体であるレチノイン酸を含む、アルツハイマー病に対する新たな治療法となりうる薬を開発し、マウスでその効果を確認したと、平成26年6月11日に発表しました。この薬はアルツハイマー病モデルマウスの空間認知障害と、アルツハイマー病の原因物質と考えられるアミロイドβの蓄積が改善されることを見出したそうです。
これは対症療法以外には未だ有効な治療法がない、アルツハイマー病に対する新たな治療法を提案するとともに、病因解明につながる画期的な研究成果です。
βカロテンを豊富に含む食べ物
βカロテンを多く含む食品は緑黄色野菜やマンゴー、柿、すいかなどの果物のほか、とうもろこし、赤唐辛子、わかめやひじきなど海藻類、えび、かになどの甲殻類、いくら、鮭、鯛、卵黄などがあります。季節の野菜などを美味しくいただくことで、βカロテンを効率よく摂りましょう。
カロテンを含む季節の食材を大いに楽しみましょう
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■参考資料
- 脳科学辞典:ロドプシン
http://bsd.neuroinf.jp/wiki/ロドプシン - ビタミン A 類縁化合物による新たなアルツハイマー病治療法を開発
平成26年6月11日 熊本大学