アート・美術展/アートの楽しみ方入門

「うまい作品」ってなに?アートを理解、想像する意味(2ページ目)

「うまい絵ですね」「いい彫刻ですね」と言う美術作品は、何を基準にしているのでしょう。たとえば人を描いた絵なら、その人そっくりに描けていたら「いい」のでしょうか?だったら写真で事足りるハズでは?

藤田 千彩

執筆者:藤田 千彩

アートガイド

次に、既にあるものをそのまま複製する、という立体作品を紹介します。

これは本物、実物ですか?

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大西伸明 《isu》 2014 樹脂に塗装


 
アーティストの大西伸明さんは、表現したい「モノ」を樹脂で型どりし、色を塗った「作品」を、美術館やギャラリーで発表しています。

「僕はただのコピーをつくっているわけではありません」(大西さん)

どう見ても「完コピ」をねらってるように思えるのですが、どういう意味でしょうか?

「型どりした樹脂に透明な部分を残したりすることで、いくつもつくりだせることを表しています。焼き増しができる写真のようであり、この樹脂は私が色を塗ることで、絵のように、世の中にたったひとつしか存在しない作品をつくっています」(大西さん)。


作品の表面「以外」を知ることも大切

パッと見ただけで大西さんの制作意図を想像することは難しいです。

「たくさんつくることができる、だけど作品はひとつだけしかない、ということは何も私が思いついたことではありません。過去にもそういう作品はあった、ということは美術の歴史つまり『美術史』をひもとくことで分かります。美術界やそれ以外の社会での出来事、アーティスト自身の経験などで作品は生まれることもあるので、アーティストが遺した言葉を聞いたり、文章を読むことで、作品への理解は深まります」(大西さん)。

なるほど、「作品解説」が配られている展覧会もありますよね。

「しかしコンセプトだけで頭でっかちになったり、作品とかみ合ってない場合もあります。コンセプトがあることがダメな場合もあるし、魅力に感じることもあるので、私は制作するときに『理解できない』ことも受け入れていくことも大切だと思っています」(大西さん)。

作品の前に立ったとき、見た目で判断するだけでなく、アーティストがなぜこの作品をつくったのかを想像すること。そして塗られた絵具や作品の形などに、思いを寄せること。自分の中に何か引っ掛かったら、アーティストの言葉をあたってみること。表面的に「きれい」「リアル」「上手」な作品ではなく、あなた自身にとって「いい作品」「良い作品」に出会えるといいですね。

<今後の予定>
大西伸明

「タイトルなし」 "untitled"
榮水亜樹、大成哲、大西伸明、牡丹靖佳
開催中~2014年11月9日(日)
MA2gallery(東京・恵比寿)


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