マネジメント/マネジメント事例

マクドナルドのブランド失墜に回復策はあるか

日本マクドナルドが、上場来初の営業赤字を計上する見通しを発表し話題になっています。直接の原因は、7月に発覚した肉の仕入れ先であった中国企業が使用期限切れの鶏肉を使用していた事件で、顧客離れに歯止めがかからないこと。しかし、根本にあるのは同社のブランドイメージ低下という由々しき問題です。マクドナルドのブランドイメージの低下を通じて、企業ブランドの崩壊と回復策について考えてみます。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

企業のブランドイメージとは

ブランドイメージとは、消費者が企業の提供する商品やサービスを通じて、あるいは企業広告を通じて持つ、企業ブランドに対する印象のことを言います。これは、ヒット商品の登場や企業業績の向上により良くなることがあるとともに、企業不祥事や業績の低迷によって悪くなることもあります。

マクドナルドがこれまでの企業活動の中で培った企業イメージは、「親しみやすい」「手軽な」「安価な」「子供に人気の」など。これら主に商品・サービスから形成されたイメージとともに、日本での業歴の長さや安定した業績から、「信頼感のある」という企業イメージも少なからず醸成されていたと言えるでしょう。

解説

中国の事件でマクドナルドブランドは失墜した

しかし、今回の中国企業による使用期限切れ鶏肉事件は、これらのイメージのすべてに大きなマイナスを及ぼすことになりました。「親しみやすい」は「遠ざけたい」に、「手軽な」「安価な」は「手軽で安価で危険な」に、「子供に人気の」は「子供には食べさせたくない」に、そしてこれらのブランドイメージの総体として「信頼感のある」は「信頼感に不安な」になってしまったのです。

生命線部分での失策はブランド崩壊の致命傷

注目すべきは、今回の事件では具体的な形で健康上の被害者は一人も出ていないことです。さらに加えて、問題の材料が使用されたのはメインメニューのハンバーガーではなく、サブメニューのナゲットだったということ。それなのに、一体なぜここまで激しいブランドイメージの低下に至ったのでしょうか。

それは、今回の一件が「食の安全」に関わる問題であり、食品および飲食を扱う企業にとっては最も重要な生命線とも言える部分でもあるからなのです。言い方を変えれば、家電メーカーにおける製品安全性と同じく、利用者が企業評価で最も重視するであろう部分で失策を演じてしまうことは、ブランドイメージにとって致命傷になるということなのです。

そしてまた、100円バーガー戦略などで一般に「安価な」というイメージを持たれていたこともマイナスに働きました。「安価ゆえに危険性が伴う」というイメージに結び付きやすくなってしまったことも、同社の不運な部分であったと言えるでしょう。
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