あかちゃんに振り回されっぱなし『なきんぼあかちゃん』
元気いっぱいにとてもよく泣く「なきんぼあかちゃん」。大きな声で泣きすぎて、おうちの屋根を突き破って飛んでいき、あっという間に姿が消えてしまいました! なかなか見つからないあかちゃんをようやく見つけたのはいいけれど、そこはとても危険な場所。万事休す!と思いきや、予想外の心温まる展開、さらにびっくりのもうひと展開。テンポよく最後まで読者をグイグイとひきつけます。あかちゃんを探してあたふたと走り続けるおかあさんの様子に、小さな子どものお世話に日々追われる自分を重ねてしまう人もいるかも!? 奇想天外な展開ですが、実際の子育ての中で出会う場面と重なる部分もあり、大人にとっても楽しい1冊。最後は穏やかな笑いをもたらしてくれます。
飛んでいったあかちゃんを探してどこへでも!
飛んでいったあかちゃんを探しに行く途中で、おかあさんは色々な人に出会います。ひとくせもふたくせもありそうな雰囲気の人間や動物たちから情報をもらい、とにかくあかちゃんが無事なのだろうか、危険な目に遭っていないだろうかという思いだけで走り続けます。森の奥も、魔女の家も、険しい山の上の木の上も……。「あかちゃんがあそこにいるよ」と聞けばどこへでも飛んでいくおかあさんは、スーパーウーマンのよう。ようやくあかちゃんの居場所を突き止めると、そこは危険な動物の巣でした。その動物が取った行動には、思わず頬がゆるみます。その行動のわけに気づくと、さらに温かい気持ちになるでしょう。おかあさんとその動物には、お互い、あることに真っ只中のもの同士という共通点があったのです。
あかちゃんと一緒だからこそのたくさん出会い
あかちゃんと一緒に出かけると、1人の時とは違ってたくさんの人に声をかけられます。あかちゃんがいなければ言葉を交わすことがなかったであろう小さな出会いや心の交流があったり、一見こわもてな人のあかちゃんへの優しい眼差しに、ホッとしたり嬉しくなったりした経験はありませんか? 絵本の中のおかあさんも、あかちゃんを探し続けてヘトヘトなはずですが、そんな意外な出会いを経験し、さぞかし感激したようです。それでも一筋縄でいかないなきんぼあかちゃん
しかし、そこで一件落着とはなかなかいかないのが、子育て!? お話は、またまた大声で泣き出したあかちゃんが、これからも波乱を呼び起こすであろうことを予感させ、締めくくられます。ダイナミックな絵と勢いのあるお話展開は、ついこの間まで赤ちゃんだった2歳ぐらいの子から楽しめるでしょう。このおかあさんは、これからも長く続いていく子育ての中で、色々な大変さを経験することでしょう。でもあかちゃんの存在によって味わったこの日の喜びは、おかあさんの心の小さな支えとなるかも……。小さな子のお尻を日々追いかけている私は、こんな風に感じました!