住宅展示場・モデルハウス/住宅展示場・モデルハウスの見方

「カフェ」で家を売る時代?新アンテナ拠点(下)(2ページ目)

前回に引き続き、住宅展示場に代わる新しい動きとしての、住宅メーカー単独による異業種とのコラボレーション拠点をご紹介。今回は豊洲のタワーマンション密集地に出現した都会のエアポケットカフェをご紹介します。その狙いとは?

河名 紀子

執筆者:河名 紀子

家づくりトレンド情報ガイド


住宅資材・設備・家具メーカーとのコラボ

IKEAの照明。この空間でみると1万円を切る価格とは思えない

IKEAの照明。この空間でみると1万円を切る価格とは思えない

冒頭に述べたようなシステムにより、このカフェは住宅資材設備メーカーや家具メーカー約20社と提携して、建材・設備・インテリア・家具・エクステリアをすべて無償提供してもらう仕組み。これでコスト低減を図れるほか、「住宅用資材だけでカフェを作ったというサプライズも提供できる」(入川社長)という試みも意図されています。

店内にはIKEAの家具や協賛メーカーのタイルやフローリング材、エクステリア資材が至るところに使われ、PRコラボレーションになっているのですが、その協力メーカーのカタログが横に置いてあるわけでもなく、「この商品は○○でお買い求めいただけます」と記した名刺サイズの小さなプレートが置いてあるだけ。
ソファやキッチン、暖炉などがあり、誰かの家に招かれたようなリラックス感漂うハウススペース。ここでも飲食が楽しめる

ソファやキッチン、暖炉などがあり、誰かの家に招かれたようなリラックス感漂うハウススペース。ここでも飲食が楽しめる

建物の建築施工はプロジェクトの主導に立った大和ハウスが手掛けていますが、店内にはダイワハウスの文字もなく、主力商品「ジーヴォ」のカタログやポスターも置いていません。実はこれも一つの戦略だったようです。

カフェ店舗として運営に入っている株式会社ラフリンク桑原社長は「カフェにそうした営業ツール類が少し見えただけで、お客様のリラックス感が損なわれてしまう。特にここ豊洲エリアに住む感度の高い富裕ニューファミリー層は敏感に感じ取ります。あくまで上質なカフェタイムを提供できる空間を重視したかった」。

カタログや営業ツールが置いてない理由

ハウススペースには本格的なIKEAのアイランドキッチンも。ここでホームパーティなどにスペース貸出も行っている

ハウススペースには本格的なIKEAのアイランドキッチンも。ここでホームパーティなどにスペース貸出も行っている

「ここに住む奥様層は子育て真っ最中。しかもワンランク上の子育てライフがしたい層。ベビーカーは高級ベビーカーと言われるマクラーレンは普通、中にはその上をいくニッチな輸入ベビーカーを押している若いママも少なくありません。そうした目の肥えた主婦層に心からリラックスしていただくために、極力営業色は抑えています」(大和ハウス)

しかし、例えば暖炉のあるソファスペースにあるIKEAの照明は何と9000円台。その価格を思わせない上質なインテリアコーディネートが実にうまい。「この演出と価格のギャップがサプライズとクチコミを生み、じゃぁウチでもやってみようかなと思わせる」(IKEAのPR関係者)。そこも戦略としてうまい。

また最近の子育てママは「子育てにやさしい企業」に非常に敏感。カフェ敷地内には認可保育園やスポーツ幼稚園を誘致するほか、店内には上質ながらも子供の絵本やキッズメニューが置いてあったり、ベビーカーでも広々と通れる空間的ゆとりを確保していたり、緑の広い芝生で駆け回る子供たちを、店内のガラス越しにコーヒーを飲みながら眺められたり……。このあたりの子育てサポートもガイドもママの一人として大きな好感を持ちました。
夜はバータイムもある

夜はバータイムもある

「カフェを作ってもあかさらまに営業しない」。そこがこの年代とエリア層を巧みにマーケティングした戦略なのでしょう。これからの住宅展示場・ショールームの新しい手法になるかもしれないと感じました。
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